||データ通りに
放課後の教室でのことだった。
「む・・・、むむむ・・・・・・」
眉間に皺を寄せる女と、余裕そうに笑みを浮かべる男の姿があった。2人は向かい合い、トランプを手ににらみ合いをしていた。
「ぜんっぜん合わない」
「そんな筈はないだろう。1対1のババ抜きで」
「だって合わないんだもの!」
ムキになって少女が叫び、意を決したように男の手札からカードを引く。そろそろとそれを見ると、ようやく同じ数字のカードを見つけられたのか、嬉しそうに手札からカードを抜き取り、山場へと捨てる。
「あれ、いつのまに連二1枚になってるの」
「さて・・・、どっちがババだ?」
「え、うそ、ちょっと待って!」
ああああ!、と少女がひとつ絶叫。男は余裕の笑みを崩さぬまま、少女の手札からカードを取った。その瞬間、少女が残ったカードを投げ捨てる。
「なんでそっち取るのぉぉぉ」
「俺の勝ちだな」
「あーもう嘘でしょう!?」
ただの勝負ごとの筈なのに、少女のこの落ち込みっぷり。それもそのはず、2人はこの勝負に、ある賭けをしていた。それも、「敗者は勝者の言うことをなんでも聞く」という、ありがちな。
「さて・・・・・・、綾乃」
「・・・うっ」
「とりあえず、俺の家に行こうか」
「はい・・・(嫌な予感しかしねぇ)」
少女はうなだれ、男は嬉しそうな顔で、2人手を繋いで教室を去った。
後には、先程使ったトランプと、それともうひとつ・・・同じデザインのトランプが、一組残されていた。
◇
「うぅ・・・なにするの?」
私は肩を落としてうなだれながら、2つ年下の恋人を見た。彼は微笑み、シュルシュルと制服のネクタイを解く。とても高1とは思えない大人っぽさだ。
「なにするのってば」
「さぁな」
蓮二がくっくと押し殺すように笑う。私はベッドに座らされたままそれを見つめ、浅い溜息を零した。
(・・・嫌の予感しかしない)
私だって高3だし、これから起こるであろうことに予想がつかないわけじゃない。だからこそ、怖いのだ。別に彼とそれをすることが嫌なわけではないが、もしそれで何か問題が起こってしまったら。例えば子供ができたりだとか彼に幻滅されたりだとかまたはその逆だとか。後者の方はともかく、前者は本当に笑い事じゃない。アニメやドラマじゃないんだから、そんなことになったら大問題だ。いや、さすがに、彼もできうる限りの配慮はすると思うけど。
「何をするかはわかっているだろう」
「・・・そりゃ、ね」
「逃げないのか?嫌なら逃げても構わない」
「あのねぇ、それでほんとに私が逃げたらどうするつもり?」
「どうもしない。今後一切の手出しをしなくなるだけだ」
「そういう答えが返って来るとは思ったけどさー」
はぁ。また溜息がこぼれた。
手出しをしないというのは、彼はどういうつもりで言っている言葉なのだろう。会わないとか、キスとかそういうことをしないとか、「手出し」の意味は色々と考えられる。もしそれが「関わらない」という意味なら、それはそれで大問題なのだが。
「綾乃」
「・・・ん」
ちゅ、と口付けた。急に意識が引き戻され、ぼうっとしたような気持ちで彼を見つめいる。ここまでくるとグダグダ考えるのは馬鹿らしくなって、私はひとまず目の前の彼へと集中することにした。
啄ばむようにキスを繰り返しながら、背中に手を回され、ブラウスの下からブラのホックを外された。ひとつひとつボタンが外され、外気に肌がさらされる。インナーの中に蓮二の冷えた手が侵入してきた。
「んん・・・、」
「綾乃」
「うん」
促されるままにベッドに倒れた。インナーをめくりあげられ、胸元が彼の眼前に晒される。気恥ずかしくて目線をそらすと、彼は微笑んで私に口付けた。
「ぁ・・・、ふ」
胸の頂をひっかかれる。やばい、これ思った以上に恥ずかしい。身もだえすると、蓮二がふと手をとめた。私を気遣っているのかもしれない。
「・・・胸は、触んないで。はずかしい」
「下のほうが恥ずかしい気がするんだが」
「や、私からはあんまり見えないから良い」
「・・・そういうものなのか?」
「私にとってはそういうものなの」
うんうんとひとりうなずいていると、蓮二に苦笑された。じゃあ、とばかりに制服のスカートの下から彼の手が入れられ、下着越しに秘部をなぞられる。ぞくぞく、と背筋に何かが走っていくような感覚だった。
「ぁ・・・、やば」
指がぐりぐりと押し付けられ、ちょうど一番感じるところを何度も刺激される。あれ、初めてなのになんでわかるんですか蓮二クン。
「ふ・・・ぁ、あん・・・」
下着の下に冷たいものがいれられた。ぐちゃ、っていう水音が聞こえたから、たぶんもう濡れてるんだと思う。下着を脱がされ、太ももから上の方へとなぞらえるように彼の手が動いた。ほんと、いやらしいんだよね、その手つき。
「ゃあ・・・んっ」
入口のあたりに指が軽く沈められる。少しずつずぷずぷとナカへ押し入られてくる感覚があった。微妙に痛みがあったけれど、それより彼に与えられる快感のほうに気を取られて、あまり気にならなかった。彼の指が、かき回すように内壁を刺激する。
「ぁああっ、あ、んん・・・ぅ」
「・・・大丈夫か?」
「い、ま、話しかけないでっ」
シーツを握り締め、更にそれに力を込めてそう答える。できるだけ声を出さないように堪えるのに必死で、なりふりなど構っていられなかった。
「んん・・・っ、ん・・・!」
彼の指が止まった。いや、まだくるくるとナカで回される感覚はあるが、たぶん指が届く最奥まできたのだろう、奥への進行が止まったのだ。
「ぁ、はっ・・・ぁ、ああ・・・」
次は何をされるのだろうか。
快感に揺り動かされ、ついとそんな風に頭が考えた直後、ず、と一気に指が引き抜かれた。驚いて蓮二を見る。すると蓮二もこちらを見ていて、困ったような表情をしていた。
「ど、した、の?」
「・・・すまない。これ以上先に進む前に、ひとつ言うべきことがあってな」
「・・・なに?」
「今日の賭けなんだが・・・あれはイカサマだ」
「え」
「もう一組同じトランプを使ってやり取りをしていたのだが・・・見事に気がつかなかったな、綾乃は」
「ええ、ちょっと、じゃあ私・・・」
「勝ってはいないが、負けてもいない。普通にやっていたら、どっちが勝っていたかはわからん。俺のデータでは、恐らくお前が勝っていただろう」
「・・・まじぃ?」
「まじだ」
すまなそうに蓮二は微笑んで、それから私に顔を近付け、小さく口付けをした。
「だから、この先は俺にはできない。そもそも賭けに勝っていないのだから当然だ」
「・・・じゃあ、私が、ひとつお願いして良いってこと?」
「そういうことになるな」
お願いか。今、一番蓮二にして欲しいこと。
「・・・・・・蓮二」
「なんだ?」
「続き、しよ」
「・・・・・・わかった」
データ
通りに
蓮二が微笑んで、また私に口付ける。それを見ながら、きっとこれは蓮二の策略で、蓮二のデータ通りなのだろうと思った。けれど、それならそれで構わない。蓮二、好きだよ、と小さく告げて、幸せそうに微笑んだ。
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裏シーン少なめですみません。
甘裏と裏の違いってなんだろう。
リクエストありがとうございました!
2013/1/4 repiero (No,85)