||チャイルド


「ねー蓮二。そろそろ子供欲しくない?」

ぱりーん。蓮二お気に入りの皿が割れた。





はじまりは、その一言からだった。付き合い始めて5年、結婚生活をはじめて1か月経つ今日にいたるまで、私たちはいわゆる「大人のお付き合い」というやつをやったことが一度もなかった。最高キスまで、それ以上はやんわりと避けられてきた領域だ。なぜならばなぜならば、それは私が蓮二に異様に大事にされてきたからで、恋人と言う関係にありながらも、私は手を出されずに付き合いを続けてきたのだった。今時のカップルには珍しいだろう。私は別に構わないのだけれど。

「・・・・・・子供の作り方を、わかっているのか?」

しかしながら、こんな質問が飛んできたからには少しカチンとくるものがある。一般常識じゃワレ。蓮二としても、私がそれのことを知らないとは思っていないのだろうが、混乱の末にとっさに出た言葉がそれであるようだった。

「いや、ほらね。やっぱり結婚したからには、子供ほしいじゃん?」
「・・・・・・それは同感だが」
「愛の結晶っていうかさぁ。人類の発展の為にも産んどかないと」
「お前の場合、後者の理由の方が若干重要視されている気がするが」
「あはっ、そりゃまぁ。あ、でも安心して、比率4:6だから」
「・・・・・・」

蓮二は呆れ気味に溜息をつき、それから諦めたように投げやりに、「わかった」と言った。そんな姿を見ていると、実は蓮二はただ単にセックスがしたくなかったんじゃないか、なんていう考えが脳裏を掠めたが、3歩あるいたらそんな考えは遠くに消えていた。





その夜。私たちはベッドの上に正座で向かい合っていた。いやなにこの状況。暗い室内だからムードはあるっちゃあるが、なんで正座なんですか。重い話し合いでもするつもりですか、蓮二君。

「・・・とりあえず脱いで良い?」
「あぁ」

あぁ、良かった、子供を作る気はあるんだね。てっきり蓮二がただの朴念仁に成り下がったかと思っ・・・まぁそれはいいや。私は薄いシャツと短パンを脱ぎ捨て、下着だけになると、さっさとその邪魔なものも取っ払おうとした。しかしやんわりと蓮二にとめられる。ここにきてまだダメなのかと思ったら、そのまま彼に押し倒された。降ってくるのは久しぶりのキス。いいんだな?、なんていう質問には答える暇もないほど、私はこの状況に興奮していた。これからとうとう、私は蓮二と一線を越えるのだ。

「んっ・・・、あ、だめっ」

彼の手が、ブラジャーの下にずり込まされる。胸を覆うそれはあっさりと外され、開放感と共に下腹部が疼いたような気がした。私と彼の関係はキスまで。それがたった今、壊されたわけなのだ。
蓮二はやんわりと胸を揉むと、中央の突起をぐいと押した。初めての感覚に身体が震える。上目遣いに彼の糸目を見つめると、少しだけ、その奥の瞳が揺れた気がする。上から見下ろされてもかっこいいんだから困る。その白い肌に触れると、蓮二が優しく微笑んだ。

「好き」
「・・・今それを言うのは反則だろう?」
「あはは、でも、私が言うってこと、わかってたでしょう?」
「確率上では98%だった」
「さすが、わかってるねぇ」

軽口を叩いてやると、蓮二は嬉しそうに口元を緩めた。彼の微笑みは、見ていて本当に穏やかな気持ちになる。彼の笑みに感化されつつあると、突然、下腹部をなにか冷たいものが掠めた。

「ゃっ・・・!」

すぐに何かわかった、蓮二の指だ。彼の指はするすると腹部を下り、下着越しにわたしの秘部へと触れる。それが恥ずかしくて、隠すように両足を動かす。わたしはそれで隠したつもりになっていたが、蓮二にとってはその行為は逆効果だった。

「誘っているのか?」
「なっ・・・、そんなわけ・・・・・・」

ある。そもそもセックスをしようと言ったのは私だ。そこを考えると、私は今、蓮二を浅はかにも誘おうとしているのだ。

「ふっ・・・、ぁ、ゃあ・・・」

蓮二の指が、また秘部を掠めた。足を何度捻っても、蓮二は同じところばかり刺激してくる。それがなんともじれったくて、身を乗り出すように動いた蓮二の身体を、両足で挟み込んだ。蓮二の動きが止まり、こちらの顔を見た。

「・・・・・・」

私自身、自分がどんな顔をしていたのかは知らないが、たぶん余裕のない顔だったと思う。蓮二の口元が笑んでいたから。彼は私を見つめて、なんとも形容しがたい表情をしていたが、たぶんあれは、いわゆる彼の「男」の顔だったのだろう。

「・・・っあ、待っ・・・」

蓮二は無言で私の下着を脱がせた。中途半端におろされた下着が、膝の辺りで私の動きを封じる。蓮二は、たぶんぐちょぐちょになっているであろう蜜壷を見つめ、薄く目を開いた。せめてまじまじと見られまいと、両足を閉じたが、彼の手によってすぐに開かれた。

「っ・・・、ぁ、あぁっ・・・」

ナカに彼の指が押し入るのがわかる。ちゅ、という水音が耳につく。ナカで何度も彼の指が前後するのがわかった。だんだんと意識が薄れる。

「ひぁう・・・れん、じ・・・っ、も、いいから・・・」
「・・・いいのか?」
「げんかい・・・」
「わかった」

蓮二は薄く微笑み、最後にいとおしむように私の頬を撫ぜ、それから己のモノを取り出した。すでにパンパンに膨れたそれは、彼がずっと我慢してきた証拠でもある。無理をさせていたのかなぁ、と今更ながらおぼろげに考えた。

「いれるぞ」
「っ・・・、は、ぁ・・・ぁ、あ、ぁああ、」

指とは比べ物にならないほどの質量が、自分の中に入ってくる。すでに私の頭は真っ白で、何も抑えることなく口からもれ出る声が、まるで自分の声だとは思えなかった。でも、大好きな彼とつながっている。たった一度で子供を作ることは難しいかもしれないけれど、でも、この行為が彼との未来を作る礎になるのだ。

「ふぁ、れん、じぃ・・・っ」
「・・・っ、綾乃、愛してる」

その言葉と共に蓮二が律動を始めると同時、私は欠片になって残っていた、理性というものを一切合財飛ばした。彼に身を預け、何も考えずに快感に溺れる。こんなに楽なものはない。

「ぁあっ、あっ、あっ、あ、」
「・・・ッ」

次の瞬間おとずれた重たい刺激に、私は微笑みと共に蓮二の影を見ていた。


ャイ


それから数ヵ月後、私たちが祝福の知らせを受け取るのは、また別の話。
――――――――――――
背景設定重視になってしまいましたが、楽しく書けました。
リクエストありがとうございました!

2012/12/18 repiero (No,83)


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