||幸福


※いきなりヤってます

「・・・ぁあっ!」

甘い嬌声だった。首筋をなぞられてゆく感覚、室内に籠る濃密な匂い。白い肌がこすれあい、絡み合う様は、なんともいえぬ情緒を感じさせる。何度も細い指が行ったり来たりと鎖骨の辺りを撫ぜ、仰々しいほどに私の体が大きく反らされた。男・・・雅治は、それを眺めてはうっすらと笑い。

「っさ、はる・・・、ぁあん・・・・・・」
「どうしたんじゃ?まだ肝心なところには触ってもおらんきに」
「ひっく・・・ふっ、ぅ・・・」

私の記憶が正しければ、これはすでに何回と交わした問答だった。身ぐるみを剥がされ、ベッドに押し倒されてかれこれ十数分。彼から与えられる「快感」というものはけれど、どちらかといえば拷問にすら近いものであった。
肝心なところには触れられず、ただ上半身の際どいところを指先が往来するばかり。決定的な快感は与えられることなく、もどかしく身体がよじられる。いじわると言うには度を越えた行為に、雅治を精一杯怨めしそうな顔で睨もうにも、力が入らない。今まで幾度となく彼と身体を重ねたが、これほどまでに屈辱的な想いをしたことはなかった。

「や、ぁん・・・触ってよぉ・・・」
「触っとるよ、ずっと」

そんなの屁理屈だ。だだをこねるように、雅治の腕に擦り寄った。そうすることで、少しでも彼に多く触れてほしかったから。快感が欲しい、このもどかしさから逃れる術が欲しい。ただそれだけを考えて、夢中になって彼へとすがった。
雅治は薄く、わずかに嬉しそうな笑みを浮かべてこちらを見ていた。彼の手はあいかわらず私の上半身ばかりを這いまわり、私はそれを浅ましく追いかける。

「なぁ、綾乃、気持ち良え?」
「・・・・・・っ」

ゆっくりと、首を横に振った。懇願するような眼差しを雅治へと向ける。彼は私の心境をわかっているはずなのに、余裕そうな笑みを崩そうとはしない。彼の手が少しだけ胸元を離れ、下腹部をすりすりと撫で始めた。

「っぅあ・・・、」

ぴゅ、と秘部から蜜が溢れるのが自分でわかった。突然の刺激に、身体が異常なまでに反応を示してしまうのだ。雅治の手はいたわるように下腹部を撫で回したあと、私が羞恥と屈辱とで限界に達しそうになっているのをようやく察したのか、ひとつ笑んで、そろりと秘所に触れた。

「っぁああん」

自分でもびっくりするくらい高い声だった。媚びるような、欲望の全てを吐き出すかのような嬌声。雅治がわずかに顔をあげ、驚いたようにこちらを見る。私は恨めしげに見返し、早くもっと触ってくれと目で必死に訴えた。

「淫乱」
「・・・っ、誰の、せいで・・・」
「さぁ、誰じゃろうな?」

雅治は肩をすくめ、わざとらしく微笑んで見せた。そんな笑顔はいつもどおりかっこよくて魅惑的ではあるが、今の私にとっては悪魔の笑みでしかなかった。悪言のひとつでも言ってやろうかと私が口を開いた瞬間、雅治が前触れなく秘所に指を突っ込んだ。

「ぃっ・・・!?ぁああああっ!!」

どくん、どくん、とナカが脈打つのがわかった。絶え間なく流れていく蜜が、彼の指をねちょねちょと汚していく。雅治の指は躊躇うことなく奥へと進んでいった。いきなりだったことと、長い前戯のせいで感覚が薄れているせいもあり、何本入っているのかは定かではなかった。しかしおくに進みながらもバラバラと指が内壁を刺激する感覚があるからには、少なくとも2本はすでに入れられている。

「いぁあっ、はぁ・・・っ、あぁん・・・っ」

呼吸が必然的に荒くなる。すでに気が狂いそうなほどに快感が与えられているのに、更にそれよりも強い快楽を手に入れようとしているのだ。先ほどまであんなに雅治を恨めしく思っていたのが嘘のように、私の頭は快感を得る為のことしか考えていなかった。

「まさ、はる・・・っ!も、ほんとに限界・・・」
「・・・おん。俺も、これ以上はさすがに無理じゃ」
「ぇ・・・、っ!」

ずずず、と雅治の指が引き抜かれた。突然の虚無感と消失感が、絶望に似たものを思わせた。震えるように彼の方を見ると、私の蜜で汚れた指を舐めているところだった。恥ずかしさに顔を伏せる。雅治が笑った気がした。
雅治は私の腰を掴むと、ええか?、と囁くように尋ねてきた。私は必死でうなずいた。その直後、はちきれんばかりに膨れ上がった彼のモノが、入口に宛がわれた。

「・・・ッ」
「ひ、ぁ、あぁぁあっ!」

ナカに押し入ってくる巨大すぎる質量。ゆっくりとそれが進んでいく途中、一瞬頭が真白になった。イッたことで締め付けてしまったのか、雅治が顔をしかめる。でも彼は気にせずにそのまま奥へといれてきた。

「ぁ、はぁ・・・ぁっ、あ、」
「動いてええ?」
「ま、って・・・待って・・・」

はぁ、はぁ、と荒く呼吸を整えた。さっきまであれほど私をいじめていたくせに、こんな時ばかり彼は優しい。自分だって余裕がないくせに、私が落ち着くまできちんと待ってくれる。これだから嫌いになれないのだ、彼のことが。彼の芯には、たしかに私への愛情と優しさがあるから。

「・・・大丈夫、いいよ・・・」
「・・・・・・おん」

私がうなずくのに雅治は微笑んで、それから勢いよく前後運動を始めた。どん、どん、と奥を突かれるたび、毎回イきそうになった。ぐちゃぐちゃと猥らに流れていく蜜が、振動で太もものほうまで垂れていくのがわかった。

「ぁあっ、あっ、あっ、ああぁっ!」
「ッ・・・・・・」
「あっ、あんっ、ぁっ・・・・・・」

ほんのわずかな間、今何が起こっているのかわからなくなった。視界は再び真っ白になり、身体の髄から突き上げてくるような快感に、意識を手放してしまいそうになった。気がついた時には雅治が己のモノを引き抜き、私の腹部に大量の精を放ち終わっていた。

「・・・、ま、さ?」

小さく、ぼんやりと彼の名前を呼んだ。彼は少しだけ顔を歪めつつも、私を見て幸せそうに微笑んでくれた。彼が隣に転がる。私はそれを感じて、彼の方に指を伸ばした。

「愛しとぉ、綾乃」
「・・・ん」





そう言って私のひたいにキスを落として、今までのどんな時よりも優しく、私を抱き締めてくれた。
――――――――――――
初めから及んでるのはどうなんだろうと思いつつも激裏だから良いかと言うことで。

リクエストありがとうございました!

2012/12/2 repiero (No,80)


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