||please


嫉妬していた。あいつにすり寄る女共に、その可愛らしい笑顔に。

・・・ね、なんで気付かないの?





「仁王君」

嫌な笑みだった。にこにこにこにこ。貼り付けたような笑みだ。媚びるように彼を見つめて、上目使いなんてしてさ。いちいちこっち見ないでよ。その勝ち誇ったような笑み、ムカつく。
あたしの前でわざわざそんなことして、なにがしたいんだか。あの子の目的は雅治か、それともあたしへの嫌がらせか。どっちなのか疑っちゃうよね、ほんとに。

「ねぇ、今日一緒に帰らない?」

・・・はぁ?思わず口をついてそんな声が出そうになって、慌てて口を紡いだ。だって、ねぇ。あたしが近くにいるのに、どうして堂々とそんなことを言えちゃうわけ?それに驚いたような反応しかしない雅治も雅治。もうちょっと拒絶するような雰囲気出せないわけ?あぁもう、ほんと苛々する。あんたの彼女は、その狐みたいな女じゃなくて、あたしでしょう?

「残念じゃが、俺は綾乃と帰るけぇ」
「えぇー、そうなの?今日くらい良いじゃん」

だから、その媚びるような目、やめろって言ってんじゃない。苛立たしげな視線を飛ばす。女は雅治の返答に残念そうな色を滲ませながらも、あたしにはしっかりとすかしたような笑みを忘れなかった。それに挑発されて、もっと苛々としてしまうのが悔しくて、あたしはその女から目を背けた。同時に、雅治からも。だって今見たら、間違いなく睨んでしまう。

「あ・・・、峰里さん。ちょっといいかな?」
「・・・なに?」
「そんな怖い顔しないでよ。あのさ、帰り、暇かな?」
「・・・は?」
「もしよかったら、俺と一緒に帰らないかな」

びっくりして、目を丸くする。突然話しかけてきた人は、たしか同じクラスの高橋君だ。面識がないわけじゃないけど、でもこうやって誘われるくらい仲が良いわけではない。あいにくだけど、とあたしは即座に断った。彼は残念そうな顔をして去っていった。あたしに彼氏がいるの、知ってただろうにな。もしかして、さっきの様子を見て声をかけてくれたんだろうか。

「・・・綾乃」

今度は反対方向から声が聞こえた。そちらを向くと雅治が不機嫌そうな顔をしていた。あたしも彼を見た途端腹がたってきて、不機嫌そうな顔になってしまう。帰ろ、という小さな声の後、雅治に軽く手を引かれた。それにつられて歩き出す直前、ものすごい形相をしたさっきの女と目が合ったが、小ばかにするように一瞬だけ笑って、すぐに目を逸らしてやった。





「わ・・・、と」

のしかかるようにして倒されてすぐ、振ってきたのは柔いキスだった。しゅる、とネクタイをほどく音が聞こえ、驚いてその手を素早く掴む。いつもならここで止まるはずが、雅治はあたしの手を振り払って、再びあたしの制服に手をかけた。ブラウスに手がかかる。今度こそ、驚いて雅治を突き飛ばした。少しだけ彼がよろめいて、後退する。あたしは彼の不機嫌そうな表情を見つめ、少しだけ後悔というものを滲ませ始めた。
「今日はうちに寄らないか」、なんていう珍しい誘いの裏にあったのは、彼の性的な思惑だったのだから。

「雅治っ、なにするの!!?」
「なにって、セックス以外に何が?」
「そうじゃなくて! いきなりって、どういうこと!?」
「どうもこうも、そのまんまじゃ。俺がしたかったからっつうだけ」
「・・・!・・・最ッ低」
「最低はどっちじゃ」

雅治は、口元だけで笑ってみせた。どこか卑屈的な、悲しそうな笑みだった。あたしは何も言えずに、ただそれを呆然と見つめる。雅治に最低なんて言われるような謂れは、思いつく限りどこにもなかったから。
彼がまたあたしの手を掴み、今度はさっきよりも強い力でベッドに押さえつけた。手が動かない。上にのしかかられているせいで、足もうまく動かせなかった。ブラウスのボタンを外され、ブラのホックも簡単に外されて。開放感と共に胸におとずれたのは、ひんやりとした手の感触。指がいやらしく胸を這う。

「はっ・・・ちょ、っと、雅治!」
「・・・・・・」
「やめてっ、やめてってば!!」
「・・・・・・」
「雅治・・・、んぁ・・・」

あたしは必死に抵抗した。でも、身体がびくつくたびに、力が少しずつ抜けていく。はじめて雅治のことを怖いと思った。でも、それを言うことすら、雅治の表情を見てしまっては、言うことなんてできなくて。
彼は、とても、悲しそうな顔をしていた。

「雅治、なんで、」
「なんで?」

雅治が一瞬、手を止める。考えるような表情をほんの僅かにのぞかせた後、すぐにそれを隠すように手が動いた。その感触が、快感である筈なのに嫌に感じた。

「なんでこんなことするの?」

もう一度尋ねてみた。それに反応して、やはり雅治が手を止める。今度は長かった。かけられた力が緩むことはなくとも、それでもわずかな間、彼の手が確かに止まって。

「・・・わからんか?」
「わかんないよ」
「・・・・・・今日、男に一緒に帰ろうって誘われとったじゃろ」
「あぁ」
「それだけ」
「・・・は?え、ちょっと待って、それだけ?」
「それだけじゃよ!」

自分で言いながら情けなくなったのか、雅治が困ったような顔をしてあたしからそっぽを向いた。あたしは呆然と、その表情を見つめる。今度は手の力も緩んで、あっさりと解放されてしまった。

「・・・すまん」
「ちょっと、雅治」
「なんじゃ?」
「まさかここで終わりなんていわないよね?」
「・・・は?」

雅治が驚いたような顔をした。あたしはニヤリ、と口元を歪めて、彼の手を自分から引っ張る。抱き寄せるようにして、彼と優しくキスをした。それだけの理由で犯されそうになったなら、こっちだって怒る理由は山ほどある。今日だって、あたしが誘われる前に、雅治は別の女の子に一緒に帰ろって誘われてたわけだし。

「あたしだって、怒ってないわけじゃないんだよ?」
「・・・すまん」
「違うよ。犯そうとしたことじゃなくて、雅治が他の子に帰り誘われてたこと!」
「・・・・・・綾乃が?まさか」
「なによ、あたしが嫉妬してちゃ悪い?」

唇を尖らせると、雅治は目を丸くしたまま、いや、と唇をようやく動かした。困惑したような表情が愛おしい。あたしは小さく笑った。

「抱いて?」
「・・・ええんか?」
「いいよ。1ヶ月前以来でしょ、セックスするの」

雅治は思い出すように遠くに目をやって、それからクスリと微笑んであたしのひたいに口付けた。あたしはくすぐったがるようにしてそれを嬉しそうに受ける。

「やぁん・・・、」

雅治があたしのスカートの中をまさぐった。興奮で濡れた下着を彼の指がなぞり、もったいぶった動作にあたしの腰が動いた。雅治が嬉しそうに笑った。・・・雅治、ちょっと変態っぽい。彼の指は止まらず、なんどか同じところを行ったり来たりとする。指が何度もあたしの感じるところを掠めて、その度に腰がうごめいた。押し付けられた指と薄い下着の下で、ぐちょり、なんて音があがる。

「あっ・・・ぁぁっ・・・・・・」
「綾乃、やらしい」
「ん・・・っ、早く、触って?」

あたしのねだるような声に雅治がうなずいて、下着を脱がされた。外気の感覚が、そんな筈はないのに肌寒く感じた。
雅治が入口をひっかく。身をよじって指にこすりつけようとする浅ましいあたしの行為を、彼はやっぱり変態的に、嬉しそうな目で見ていた。

「ひぁ・・・は、やく・・・」
「わかっとる」

指が少しずつ中に入っていく。まだ奥まで届いてすらいないのに、彼の2本目の指が同時に差し入れられた。珍しく、急いているのかもしれない。あたしにはそんな風には見えなかったけれど、でも、早く彼のモノを入れて欲しかったという気持ちもあったから、少しだけ痛みを我慢した。

「ふっ、ぅ・・・うぅ・・・んっ・・・」
「・・・かわい」
「っ・・・、こ、の・・・、変態・・・っ、ぃあ、」
「な、俺もう限界なんじゃけど。いれてもええ?」
「・・・早すぎ、でも、いいっ、よ」

雅治は微笑むように唇を軽く持ち上げ、指を2本とも引き抜いた。消失感と共に、内壁の擦れが痛みになって襲った。荒く息を吐き出して、呼吸を整えようとシーツをかきむしる。そうする内に、若干押し付けるように彼のモノが秘部にあてられた。ええ?、という短い確認。あたしがうなずくのが後か先か、まだ十分に慣らされていないそこに、彼のモノが侵入してきた。

「いっ、あぁああぁぁっっ!」
「・・・ッ、」

快感というより、もはや痛みでしかなかった。喘ぎというより猟奇的な、絶叫があがった。それでもあたしにとっては雅治と久しぶりに繋がっていられるのが嬉しくて、うっすらと、表情には笑みが浮かんでいた。

「ぁあっ・・・あぁぁっ」

ゆっくりと、雅治が動き始める。ぐちょ、なんていう音がたまらない。徐々に痛みは快感へと変わって、いやらしい声が恥ずかしいくらいに垂れ流しにされた。

「・・・・・・ーーーっ!」

一瞬、視界が真っ白になった。その直後に雅治のモノが引き抜かれ、あたしの腹部に白濁液が散らされる。
ぼうっと快感に酔いしれるあたしが、意識を落とす直前。ひたいに降ってきたのは、優しいキスだった。

please


――――――――――――
長っ!

リクエストありがとうございました!

2012/11/29 (No,79) repiero


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