||相愛


甘い甘いキスだった。

唇を柔らかになぞるそれを、官能的に私は見つめた。白く細い指、それだけ見れば女と見まごうかのような肌色だった。しかしひとたび肩や腹に目をうつすと、たちまち全身が「男」を主張し始める。普通よりは華奢であるが、それでもたくましい体つき。離れていく手に私の指を絡ませ、引き止めるように彼の瞳を見つめる。彼は一瞬目を細め、それから私がようやく「その気」になったことに勘付き、ニヤリと口端を持ち上げた。再び重ねられる唇、ちゅ、と小さく水音を立てる舌。それだけで下腹部がうずくような気がした。

「良いのか?」
「うん、良い」

うなずく私に、彼は笑った。





「嫌だってば」
「アーン?なんでだよ。昨日はあんなに従順だったくせに」
「昨日と今日じゃ話が違うの。2日連続だなんて、嫌だよ」
「じゃあ1日おけば良いのか」
「そういう話をしてるんじゃないの!」

はたから見れば口げんか以外の何ものでもない、ただの口論をしていた。最初それは彼の突然の提案から始まり、反発した私が引き金となって口論へと至ってしまった。彼は私を見る。私は睨みつけるように見返した。

「わがままな奴だな」
(・・・どっちが)

すかさずに言い返してやろうとも思ったが、そうは言っても彼のことだ。どうせまた「俺様」風を吹かせて、非・理論的に流してしまうに違いない。私は開きかけた口を閉じた。
豪華な部屋、豪華な調度品、無駄にでかいベッド。私たちが今いるのは、彼の家にあるとある寝室だった。3年前からずっと付き合っている彼は、いわゆるお金持ちというやつで、その家は勿論でかくて無駄に立派な邸宅だった。
私は昨日から彼の家にお邪魔をしていて、昨夜はこの部屋で寝泊りをさせてもらった。それもひとりじゃなく、彼と。まぁ20歳を越えた恋人たちが同じベッドで寝れば、何があったのかなんて今時中学生でも想像がつく。
しかしその時の私は、翌日が休日とは言え、仕事終わりに突然呼び出され、この家に無理矢理連れてこられた身だ。疲れの残った身体でセックスをするのは正直辛かった。彼もそれは察していたはず。
それなのに、翌日目を覚まして、すでに起きていた彼が開口一番に言った言葉は「おはよう」ではなく「もう一回抱いていいか」だったのだ。

「別に良いじゃねぇか」
「だーから、やだって言ってるでしょ!」

こうやって、口論になるのも仕方がない話。私はいい加減彼と話すのにも面倒な気持ちが起こって、立ち上がってベッドの方へと腰掛けた。メイドさんが持ってきてくれたジュースは、白いテーブルの上に置き去りにしたまま。景吾が後を追うように立ち上がって、私を見下ろすように立つ。景吾の指がこちらへと伸びる。頬へと触れ、私はその指の動きを感覚と視覚でもって感じとった。

「・・・ん」

口付けが落とされる。抵抗しようと思ったが、思いのほか身体がだるくて、すぐに動かなかった。口内に割り入ってくる舌は、躊躇もせずに私の口の中を這い回った。ふ、と隙間から息が漏れ、すぐにその感覚が羞恥と快感への煽りに変わる。景吾はただ私だけを見ていた。

「・・・っ、ふぅ」

景吾の舌がゆったりと抜かれ、うっすらと濡れた私の唇を、彼の白い指がなぞる。私はそれをいつのまにか官能的に見つめていて、脱力した身体が耐え切れずにベッドへと転がった。景吾がこちらを見る。私がその気にさせられてしまったことを、早くも勘付いたようだ。

「良いのか?」

さっきまで嫌がっていたくせに、と彼の唇がいやらしく言葉を紡ぐ。私は不機嫌そうにそれを見返して、小さくうなずいた。景吾は満足そうに、そして誘うような怪しい笑みを浮かべ、私の方へと顔を近づけた。

「お前は相変わらずだな」
「・・・景吾こそ」

彼の指が胸元に触れる。薄い寝間着をはぐように手が動いて、あっという間に中へと手が侵入してきた。昨日ヤッた後のままだし、わりと寝起きだし。ブラジャーはつけていない。

「変態」
「はっ、どっちが」

景吾が笑う。大きな手に胸を揉まれ、少しだけ身を捩った。頂を指がカリッと引っ掻いて、むずかゆいような感覚に顔を背けた。

「ここをいじられるのは、いつも嫌がるな」
「だって気持ち良くないし。つまらない」
「そうか」

それだけ呟くと、彼は胸元から手を離した。いつだったか誰かが「おっぱいは男のロマンだ」だの言っていたが、それは景吾にとっても同じなのだろうか。だとしたら本当はもう少し堪能したいのだろうが、彼はセックスの時、いつでも私を優先してくれた。
景吾の指が下へとつづり、待ちわびた秘所へと触れる。ここまでの行為から抱く妄想と煽りで、すでにそこは濡れ始めていた。下着越しに彼の指が円を描き、何度も経験したはずの感覚に大きく身がよじれた。

「あっ、んん・・・・・・」

焦らすように、遊ぶように。くるくると彼の指がそこをいじる。わざと中央には触れず、ゆっくりとまわしてみたり、急かすように強く刺激してみたり。彼は本当に煽るのがうまい。私が耐え切れずに足をよじらせ、こするような動作をすると、彼はようやくその秘所の中央へと軽く触れてくれた。

「ふぁ・・・っ、ぁっ」

突然の外気。景吾に下着を脱がされていた。完全に露になったそこからは白い蜜が筋となって流れる。彼はニヤリと笑みを零して、そこにちゅくちゅくと音を立てながら指を突っ込んだ。抜き差しされる異物感がたまらなく気持ち良い。シーツを握り締め、何度も身体をよじらせながら、その感覚を快感として感じとった。

「ぁあっ・・・、はぁっ、ふぅぁ・・・っ」
「余裕がなくなってきてるぜ?」
「けっ・・・、ごの、せいでしょ・・・ぁっ」

荒っぽい息。2本に増えた指の動きが早まる。ぐちょ、ぐちょ、と内壁が擦れる音がいやらしい。彼の動きが次第に大きくなり、やがて届く限りの最奥を突いた時、「あっ」という甲高い声と共に視界が一瞬真っ白になった。

「はっ・・・ぁ・・・はぁ・・・」
「もうイッたのか?アーン?」

景吾のどこか勝ち誇ったような笑み。それをギリギリと睨みつけると、ふ、という優しい笑みが返って来た。彼がズボンをおろし、すでに猛っている己のそれを取り出す。疲れのせいであまりセックスを楽しめなかった昨日と違い、今日の私はずいぶんと快感に忠実な気がした。
景吾のそれが秘所へと宛がわれる。ぐちゅちゅ、なんていう卑猥な音を響かせて、私の体内へと巨大な質量が侵入してきた。

「あぁっ、ぁ、ぁああ・・・」

嬌声のような、悲鳴のような。それがゆっくりと奥まで挿し入った直後、景吾が律動を開始した。激しく身体がゆれる。大きすぎる快感の波に、途中で意識を飛ばしそうになった。

「ぁっ、あっ、あぁっ、あ、」

前後運動のたび、胸が痛いくらいに揺れた。でもそれ以上に、下腹部からやってくる快感の方が大きくて。

「っぅ、ふっ、ぁあんっ、あああっ・・・」
「・・・ッ」

どん、と子宮の辺りに重たい衝撃があった。彼のモノが引き抜かれ、私の腹部に名残の白濁液が吐き出される。両者とも息が荒かった。しかし景吾は自分のわがままが許されて満足したのか、少し笑みが浮かんでいた。私はそれを半ば睨みつけるように見返して、こてん、と頭をベッドに転げた。





夜にまたもう一回だ、命令だぜ、アーン?なんて声に、私はもはや睨みつける気力も失って瞼を閉じた。
――――――――――――
遅くなってしまいすみません。
リクエストありがとうございました!

2012/11/23 (No,78) repiero


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