||ヘタレ街道


「はぁ・・・・・・」
「どうしたんや白石、溜息なんてついて」

ある日の放課後のことだった。部活を終え、部室で帰り支度をしていた時、突然隣で白石が重たい溜息を吐き出した。そちらを見れば、白石は溜息と共に呆れ顔で俺の方を見つめている。

「な、なんやねん」
「あんなぁ・・・。謙也、一応聞いとくけど自分まだ童貞なんとちゃうやろな?」
「はぁぁ!?」

あまりに驚いて大きな声を出したら、部室にいた全員に一斉にこちらを向かれた。俺はなんとなく気まずいような思いになって首を縮め、こそこそと白石に聞き返す。
ええと、なんでそんないきなり、どどど、童貞とか、その・・・

「その様子だとやっぱりそうなんやな・・・。お前、そんなんだからヘタレって言われるんやで?綾乃ちゃんもそろそろ次の段階いきたいんとちゃう?」
「ヘっ、ヘタレちゃうわっ!つか、なんでそこで綾乃が出てくんねん!」

綾乃は俺の中1からの彼女で、つまりもう付き合って3年になる。そんな彼女と俺がしたことと言えば、@一緒に帰る A互いを名前で呼ぶ B手を繋ぐ Cキスをする D大人なキスをする くらいなものだ。俺からして見れば・・・ちゅうか、一般的に見ても十分な進歩やと思う。俺だってやればできるっちゅー話や!

「・・・・・・そん中に"互いを名前で呼ぶ"なんてのがランクインしてくる奴は世界中探してもお前くらいやと思うで」
「なっ、なっ、なんで聞いとんねん!!」
「全部口に出てたわ」

またも白石に呆れ顔をされてしまった。仕方ないじゃないかと言いたくもなるが、そんなことを言ったらどうせヘタレだのなんだの言われてしまうのは目に見えている。

「はぁ・・・・・・そんなんじゃ綾乃ちゃんも大変やろなぁ。2人きりの時の慌てぶりが目に浮かぶわ・・・」
「さっ、さすがにもう2人きりにも慣れたわ!」
「"もう"?やっぱりお前はヘタレやな」
「なぁぁぁっ!?」
「あの、謙也さん、さっきからうるさいっすわ」
「ざっ、財前!?」
「まぁ大体なんの話してたかは察しがつきますけど・・・。ま、せいぜい頑張ってください」

ぷっ、と馬鹿にするような笑みを浮かべて財前が去っていく。そういえば財前にはたしか付き合って2年になる彼女がいて、そんで、・・・脱童貞も、済ましてたような・・・・・・。

「な、なんちゅーことや・・・」
「ま、お前が脱童貞できなくても俺らには関係ないことやし。わざわざ変な事言ってすまんかったな。綾乃ちゃんと仲良くやれよ」

白石はそんな事を言って去っていったが、絶対に確信犯だ。「完璧」目指しとる白石が、わざわざそんな無駄なことを無駄に言って帰るはずなんてあらへんからな。

「や、やったるわ・・・。俺だって!!」

ひとり決意を固め、俺は荷物を取って部室を飛び出した。





(とは言ったものの・・・・・・)

なんでこんなことになってんねん!と思わず内心突っ込みを入れた。目の前にはにこにこと嬉しそうな顔の綾乃がいて、他愛も無い話を繰り返している。俺はというと今ここに・・・、綾乃の家に、2人きりでいるということに浮き足立ちすぎて、常時そわそわそわそわ。

「あっ・・・、あんな、綾乃!」
「ん?なぁに?」
(あかん無理や!!)

さすがの浪速のスピードスター。諦めるのもスピードスター。・・・ってちゃうわっ!!俺は今日、綾乃とそ、その・・・まぁ、色々やんねん!

「・・・そ、そのやなぁ」
「・・・・・・」

うわ、これムードとか作ったほうがええんやろか。いや今更無理やな。ちゅうか白石とか財前って、いつもどういう感じでヤッてるん?いきなり押し倒したらただの変態やん。いやあの2人ならそれすらも許されそうやけど。
俺の様子を見て綾乃が何か口を開きかけ、それから思案するように軽く唇を結ぶ。それから、意を決したように再び口を開けた。

「あの、ね。謙也」
「ななななんや!?」
「私の勝手な予測だから・・・もしかしたら違うかもしれないんだけど」

っていうか、違ったらとっても恥ずかしいんだけど。
そう言って、綾乃は頬を赤くして言葉を続けた。

「その、もし・・・白石君とかから何か言われて、それで迷ってるんだったら・・・・・・いいよ。私」
「え?」
「謙也となら、私、構わないから」

ぜっ、全然違ったらごめんね!と、綾乃は二度押しするようにそう言って、赤い頬のまま俯いた。俺はそれに、ええんか?と尋ねる。綾乃はコクリとうなずいた。

「・・・こ、後悔せぇへん?」
「しないよ。大丈夫だから」
「そ、そか。ほな・・・」

どさ、と彼女をベッドに押し倒した。長い黒髪がベッドに広がって、白い首筋が晒される。そこまできても俺は未だに躊躇していたが、ここで引き下がったら男が廃る。勇気を出して彼女に覆いかぶさるように口付けた。

「謙也・・・・・・」

にこりと綾乃が微笑んだ。俺も情けなく笑い返して、彼女の服の下に手を滑り込ませる。人の手が触れたことがくすぐったかったのか、綾乃がぴくりと震える。俺はそれに手を止めて謝りかけたが、ぐっ、と堪えた。今日こそ俺は脱童貞して、ついでにヘタレも卒業しなければならないのだ。

「ん・・・、」

唇を重ね、そのすきにブラのホックを外した。どういうやり方が一番良いのかはわからないが、とにかく無我夢中でやった。唇の隙間に舌を入れ、互いに吸い付くようにキスをする。服の下にいれた右手が、彼女の胸を包むように揉んだ。頂を軽くかくと、びくりと綾乃が反応を示す。それがなんとなく嬉しくて、親指でぐりぐりとそこを刺激した。

「ふぅ・・・、んっ、ぅ・・・」

唇の隙間から、綾乃の甘い声が漏れる。ちゅ、と音を立てて唇が離れた。

「や、ぁん・・・ぁっ、ふ・・・」

指が胸の頂点をあそぶたび、細いからだが何度も震えた。俺自身も、胸を揉みこむ感覚をいつのまにか楽しんでいる。やがてその指が胸元を離れ、スカートの中に触れると、彼女の足がひくりとそこを隠すように動いた。

「・・・まだ、触らんほうがええ?」
「ううん・・・、触って?」
「・・・・・・おん」

指が円を描くように、下着ごしにそこへと触れる。最初はなでるように、なぞるように。しかし段々と指の力が増し、秘部へと擦りつけるような動きに変わっていく。くちゅ、とナカが音をたて、白っぽい蜜を溢れさせた。それを見計らって下着を一気に脱がし、ナカに指を差し入れる。

「ひぁあ・・・、ぁっ、けん、やぁ・・・っ」

ぐちょ、と秘部が音をたてた。正直言って俺の方はもう限界だが、彼女に無理をさせてはいけない。そう思って、何度も指の挿出入を繰り返した。

「ぁっ、んぁ・・・けんや、も、いれて・・・」
「・・・せやけど、」
「いい、からっ!」
「・・・・・・おん。ほな、いくで」

手早く己のモノを取り出し、鞄の中からコンドームを出して取り付けた。綾乃の秘部へとそれを宛がう。 そこからは早かった。

「ゃっ、ぁあっ、ぁああんっぁっ!」

生の女性など当然初めてだったからかそれとも別の原因か、綾乃の素肌を見るだけで限界まで膨れ上がってしまった己を、がつがつと彼女の奥へと突く。貪るように律動を続ける内、押し寄せる快感に頭が可笑しくなってしまいそうだった。

「ひっ、ぅ・・・、あああっ」

一際高く綾乃が鳴いたと同時、俺も達し、どん、と勢いよく白濁液を吐き出した。それを抜き、微妙に震える手で互いの処理をしてから、彼女の隣に転がる。

「ん・・・、謙也?」
「なんや?」
「・・・好きだよ」
「!? おっ、おおおっ、俺かて、好きや!」
「クス・・・、うん、ありがと」

小さく微笑んで、綾乃はそっと目を瞑った。俺もそれを愛しげに見つめながら、目を閉じた。





後日、脱童貞したことを白石に報告したら、なぜか「やっぱりお前はヘタレやな」と言われました。
――――――――――――
いつも前戯を長く書いてしまいます。
そっちの方が書くことが多いからでしょうか。

ヘタレを意識して書いてものの、上手くいかないものですね……。
リクエストありがとうございました!

2012/10/21 (No,72) repiero


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