||モノフォビア


私と蓮二は恋人だった。それも1ヶ月や1年とかいう短いものではなく、それこそ10年近い付き合いだった。中1の時に付き合い始めて、今はもうすぐ21というところだから、もう8年だ。

中1で付き合いだして、中2で手を繋いで、中3でキスをして、高1でもっと大人なキスをした。高2になった時は進展もなかったが、高3になると、私は彼と初めて身体を重ねた。

酷くゆっくりとした恋愛だった。私が恋愛ごとが苦手なだけあって、蓮二はずっと待っていてくれた。正直、彼にとってはかなりもどかしい付き合いだったのだと思う。他の相手に目移りせずに、今もただ私だけを見てくれているというのが本当に嬉しい。私もそれに答えるように、ずっとずっと彼だけを見ていた。

「あ、長谷川さん」
「あ、どうも峰里さん。お買い物で?」
「はい、そうです。その様子ですと、長谷川さんも?」
「ええ、娘にプレゼントを買おうと思いましてね」

あるお店でのこと。女性向けに建てられたその店の中で、見覚えのある男性の姿を見つけた。職場の先輩の、長谷川さんだ。

「なかなか良いのが見つからなくて・・・。そもそも女の子が何を喜ぶのかもわからなくてねぇ」
「・・・お子さんは、まだ小さいのですか?」
「ええ、小学3年生でしてね。もうすぐ誕生日なんです」
「へぇ・・・。それでしたら、私もプレゼントを選ぶの、お手伝いしましょうか?」
「え?本当ですか?」

驚いたような顔をした長谷川さんに、私は大きく頷いた。長谷川さんにはいつもお世話になっているし、それくらい安いものだ。私はしばらくの間、彼と一緒に娘さんへの誕生日プレゼントを探すことにした。





家に帰宅した時、浴びせられたのはまっすぐな視線であった。

「・・・ただいま。どうしたの?」
「綾乃、」
「え?」

突然、腕を引かれた。抱き寄せられるのかと思えば、蓮二はそのまま私の手を掴んで家の奥へと進んで行く。寝室に入ったかと思えば、急に彼に前へと押し出された。

「わっ・・・、」

バランスを崩して倒れこんだ先はベッド。ふか、という感触が温かい。起き上がりながら振り返ろうとしたところで、背後から重みが圧し掛かった。

「今日、さっきまで誰とどこにいた?」
「え・・・、ん、ふぅっ・・・!?」

答える間もなく、というか考える間もなく唇を奪われた。いきなりのキス。何の前触れもなく侵入してきた舌が、かき回すように口内に這い回る。久しぶりに蓮二を怖いと思った。いつもこういう事をする時は、なんとなく雰囲気をつくって、了承を得てから行ってくれる。それなのに、今は。私は視界に映る獣のような薄く開かれた瞳を、怯えるように見つめた。

「ひゃっ、やぁっ!」

唇が解放されたかと思えば、突然耳を舐め上げられた。何度も彼と身体を重ねたことで自覚したが、私は耳が非常に弱い。ほんの少し息がかかっただけで身震いしてしまう。

「れん、んんっ、何すっ・・・」
「いいから答えろ。今日、誰と、どこにいた?」

蓮二の言葉は鋭かった。強い強い口調。脅されてでもいるような心地だ。しかし答えようと口を動かしても、漏れ出るのは甘い声ばかり。執拗に攻め立てられる耳筋がから、つ、と彼の唾液が落ちた。

「ぁんっ、そこ、は・・・っ、」

突然服を捲り上げられ、素早くブラジャーをはずされた後、胸元の突起に彼の手が触れた。びくり、という震えとなってその感覚が全身に伝わる。耳への愛撫はそのままに、蓮二の大きな手によって強烈な刺激が乳房へと与えられた。

「綾乃・・・」
「はぁっ、あんっ、ぁ・・・っ、れん、じぃっ・・・!」

焦がれるような声。醜い欲望の入り混じった声。蓮二が顔を顰め、私に口付ける。頬を涙が落ちていった。彼の舌がそれをすくい、唇は再び耳元へと辿っていく。普段だってこんな弱点ばかり攻められたりはしないのに、どうして。でも押し寄せる快感の海には堪え切れなくて、私はただ喘ぎに震えた。

「・・・ゃっ・・・!?」

唐突に訪れた刺激に、大きく身体がのけぞる。蓮二の手が、スカートの中をまさぐるように、私の秘部へと触れていた。布越しの焦れた感触に身もだえする。蓮二がそこを軽くこすると、ぐちょ、という聞くに堪えない猥らな水音が聞こえた。
彼の口角がゆっくりと持ち上がる。荒く息をする私はその様子を恐れと共に見つめ、蓮二の指が再び快感を与えてくれるのを待った。あんなに恋愛が苦手だったのに、8年もの付き合いで、私はこうも猥らに成り果ててしまった。蓮二は私の考える事を知ってか知らずか、下着を下ろして直接秘部に指を突っ込んできた。

「はぁっ、ぁんっ・・・ふっぅ・・・」

かき回される感覚。蓮二の細く長い指が奥を何度も突き立てる。その度に身体がびくりと震え、嗚咽のような喘ぎと共に、白い蜜を溢れさせた。

「あ、ふっ・・・れん、じぃ・・・・・・」
「欲しいのか?」
「ぅん・・・、はや、く・・・・・・」
「・・・まだだ。お前は俺の質問に答えていないだろう?」
「・・・え?」

質問、といわれて、一瞬動きが止まる。すぐに先程の会話まで頭がまわらずに、私はしばらく思考をめぐらした。そして気がつく。蓮二が何を求め、そして何を思って私にこんな行為をしかけてきたのかが。

「今日、は・・・。仕事の先輩の、娘さんへの誕生日プレゼント選ぶのを手伝ってた」
「・・・本当にそれだけか?」
「うん、それだけだよ」
「・・・・・・そうか」

ほんの少しだけ、蓮二が笑った。彼だって私が簡単に浮気をするはずがないとわかっていたはずだが、実際にその言葉を聞けて安心したのだろう。蓮二が私の唇に柔らかく口付けを落とす。彼の手が私の腰元へと添えられた。ぼうっと蓮二の表情を見つめながら、あぁ、と頭の中で歓喜するようにうめいた。

「いれるぞ」
「ん、」

そして押し入ってくるものは、待ち焦がれた衝動。ぐちゅ、と粘液の擦れる音に卑猥な感情が溢れる。

「ふっ、ぁあ・・・れん、じ・・・っ!!」
「綾乃・・・」

蓮二が律動を開始する。ぐちょ、ぐちょ、と彼が動くたびに水音がうるさい。しかしそれよりも、自分の口から垂れ流される嬌声が恥ずかしいぐらいに響いていた。

「ぁ、あっ、あっ、ぁっ、」

ぎゅ、と締め付けがきつくなるのが自分でもわかる。視界が一瞬真っ白になって、足先がしびれた。それに僅かに蓮二が動きを止めたが、すぐにまた前後運動を再開させた。達したばかりの敏感な身体に、重たいような刺激が波のようにおとずれる。

「あっ、ふぁぁっ、」

蓮二が一瞬顔を顰めた直後、どくん、と白濁液が自分の体内に吐き出された。それと同時に私も再び頂点へと上り詰め、意識をそっと手放した。

「・・・綾乃?寝たのか?」

蓮二は頭をもたげ、綾乃の顔へと近付ける。すぅ、と聞こえてくる寝息は、確かに彼女が眠ったことを示していた。彼はそれに笑い、そっとその隣へと身体を横たえた。


モノフォビア


――――――――――――
裏にものすごく苦戦。ようやく完成です。
ちなみにモノフォビアは、孤独恐怖症という意味なんだとか。

リクエストありがとうございました!

2012/8/31 repiero (No,64)


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