||道程


「はー・・・・・・」

盛大に漏れた溜息の先にいる、数人の少女。笑顔で会話をする彼女らの中心にいるのは、現在俺が片思いしている女の子だ。笑顔が花のように愛らしくて、性格も明るい。運動は苦手だけどその分頭が良くて、言動も何もかもが「ザ・女の子」って感じの奴だ。はぁー、今日も可愛い。

「やばい。可愛い。俺死ぬかもしんねぇ」
「萌死って奴かのぉ」
「かもな」

また溜息が漏れた。片思いってなんでこんなに辛いんだろう。くっさいこと言うけど、あれだ。胸が苦しいってやつ?

「ブンちゃん、くさいぜよ」
「うるせぇよ」

綾乃さんの可愛さの前には、建前とかそういうのが全部意味ねぇんだ。無敵っつーかなんつーか、まぁとにかく、誤魔化しがきかねぇんだよ。素の自分が出るんだよな。
・・・あ、こっち向いた。手ぇ振ってるよ。可愛過ぎだろ・・・。

「俺もうこのまま死んでも良い」
「じゃあ屋上からダイブするか?きっと気持ちええよ」
「一人でやっとけ」

まだ気持ちを伝えてもねぇのに、死ぬ馬鹿がいるか。フラれたらちょっと検討するけど。つか、俺絶対告れねぇよな。噛むし、チキンだし、・・・あとフラれるし。綾乃さんモテるもんなぁ。好きな奴いんのかなぁ。あーもう、気になる。気になりすぎて頭おかしくなりそうだよぃ。

「・・・あ、ブンちゃん」
「あ?なんだよ」
「俺、ちょっとトイレ行って来るぜよ」
「はぁ?そんなん勝手に行ってこ・・・」
「じゃ、ごゆっくり〜」
「あ、おいっ!!」

ニヤリと笑みを浮かべて逃げるように仁王が去っていく。それを追って一緒に逃げたいのは山々だが、そういう訳にもいかない。何故なら俺の目の前には、

「ブン太くん」

綾乃さんが、いるから。

「あっ、えと・・・、お、おう。どうした?」

やべぇ、完全にどもった。まともに会話できる気がしねぇよ。すっげぇ緊張する。

「ごめんね、邪魔したかな」
「いっ、いや。大丈夫」
「それなら良かった!あのさ、ブン太くんって彼女いるの?」
「・・・へ?彼女?いないけど」
「ふぅん・・・、そうなんだ。あ、でもモテるでしょー?」
「残念ながら全く」
「嘘つけっ!」

あはは、と楽しげに綾乃さんが笑った。はぁ、可愛い。その笑顔だけでどんぶり5杯はいけると本気で思う。

「んー・・・、そっかぁ。彼女いないんだ」
「悲しいことにな。・・・綾乃さんは?」
「私?」

きょとん、としたような表情。入った瞬間俺はすぐさま後悔した。聞かなきゃよかった、こんな余計なこと。でも答えを聞かなければ先に進めない事は確かだ。困ったような顔をして笑った彼女を見て、ごくりとつばを飲み込んだ。

「私もねー、彼氏いないんだ」

悲しいことにね、なんて俺の真似をするように笑って言った。それにひとつ溜息。良かった、彼氏いたらどうしようかと思ったぜぃ。

「・・・じゃあ、さ。好きな人は、いる?」
「え!?、っと・・・、・・・・・・一応」
「・・・そっか。いるんだ。実はね、私もいるの」
「・・・・・・え?」

思考が固まった。綾乃さんに好きな人がいる?ってことは、俺は強制的に失恋決定じゃないか。まだ綾乃さんが誰を好きなのかはわからないけど、でも、高確率で・・・失恋。頭が真っ白になったが、彼女の声に我に返った。

「でもその人には好きな人がいるらしくて。・・・告白しようか迷ってるの」
「い・・・、いいんじゃねぇかな!綾乃さん、可愛いし。大丈夫だよぃ」
「・・・ほんとに?ほんとにそう思う?」
「お、おう・・・・・・」

あーあ、自分って馬鹿だなぁ。後で仁王に馬鹿にされる気がしてきた。そうなったら屋上から飛び降りようかな。きっと気持ち良いだろうし。あーもう、とことん自分って、

「それでね、私の好きな人って・・・。実は、今目の前に、いたりして」
「・・・・・・え?」

もう半ば諦めモードに入っていた俺の心が、一瞬固まった。





数秒後、意味を理解した俺は真っ赤になった綾乃さんを抱き締めた。
――――――――――――
ありがちになってしまいました。
リクエストありがとうございました!

2012/8/11 repiero (No,59)


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