||曖昧ピエロ
恋をすることは必然であるのか。それとも偶然であるのだろうか。いきなりそんなことを聞いてきたのは確か―…、隣の席の柳生くんだったかな。その時はとっても驚いた気がする。だってあの柳生くんが、超現実主義者っぽい柳生くんがだよ?そんなロマンチックというかそんな感じのことを聞くなんて。驚きすぎて熱?って聞いちゃったかもしれないな。うん、そう考えるとちょっと悪いことしたかもしれない。よく覚えてないけれども。
えーっと、それはさておき私は恋をしたらしいのです。それも、あのテニス部の部員さんで、あの柳生くんのパートナーである彼に。え?知らない?誰それって?……私も大分そういうのに詳しくないほうだとは思ってたけど君には負けたよ。
仁王雅治。クラスは3年B組で男子テニス部(レギュラー)。ダブルスでは柳生くんとよくタッグを組んでる。
…って、何その目?へ?お前もそれだけしか知らないんじゃんって?だから私もそういうのにあんま詳しくないって言ったじゃん。それでも好きな人のことはとことん徹底的に調べるもんって……。無茶言わないでよ。私そんなに顔広いほうじゃないんだから。
あー、でも彼女がいないってのは調べた。え?そのくらいは当然?私にしては異常な頑張りっぷりだと思うんだけどなぁ。ちょっとは褒めてくれてもいいじゃんかー
『きーてるー?春馬』
「きーてるきーてる」
どーだか。そう呟いて心底めんどくさそうな顔を浮かべる筬鵜丹 春馬を見る。…漢字にするとちょーめんどいなこの苗字。改名して来いよ私のために。
「んでお前のために改名しなきゃいけねーんだよ」
『ん?あれ、声に出てた?』
「わざとだろ」
『うん、勿論』
はああああ。大袈裟な溜め息を吐かれた。
「で、なーんで綾乃は仁王のこと好きになったわけ?」
『なーんだ、やっぱ春馬も気になってんの?』
「すげぇめんどいけど聞いてやってんだよ」
全く素直じゃない春馬の期待に添えるべく、私はまた一人語りモードへとシフトする。に、しても好きになった理由?うーん、何でだろ。
考え込む私に、覚えてないのかよと春馬は呆れながら呟く。そもそも論、恋愛に理由は必要?私は、必要ないと思うなぁ。…ちょ、くだんない戯言ほざくなって……。それはないんじゃないのかなぁ…。
あ、思い出した。いや、今ので思い出すのもなんか複雑…、いや何でもない。えーっとさ、私ってクラスでも地味な方じゃん?でさー、こないだ初めて告白されて。もー人生初の告白!誰にって仁王くんじゃないよ?私もよく知らない先輩。でも私その時この人は運命の人じゃないーって直感的に思ってフッたんだよね。でもその先輩しつこくってさー。お試しでもいいから!みたいな感じのこと言ってくんの。その時点でその先輩にはかなりドン引きしてたよ。だってお試しって…。恋愛をなんだと考えてんのかねぇ。
まあそんなわけで、でも私告白されたの初めてだから上手な切り捨て方知らなくって。すっごい困ってた時にさ、仁王くんが助けてくれたんだよねー。男なら潔く引き下がらんとウザいだけぜよーって。その時の仁王くんの顔見て、ずきゅんときて。あーこの人が運命の人なんだって思ったのです。
『…って、どーした春馬』
「……なんでもねぇよ」
若干顔が赤いようにも見える春馬を訝しげに眺めながら、私はそのまま机に突っ伏す。
『あー、どーしよっかなぁー』
「何が?」
『告白するべきか否か』
正直言って告白ってどーやんのかわかんないんだけどね。好きです!無理だ!ごめんなさい!みたいな感じ?あれ。すでに想像がマイナスになっちゃってるわこれ。
『やーっぱ私みたいな地味なのが告白しても望みは希薄どころか皆無かねぇ』
ははっと自虐的に笑いながら私はむくりと体を上げる。
委員会にも部活にも属してないし、学級委員とか生徒会にも入ってない。性格もいろんな人にも気さくに話しかけられるけどクラスの中心には程遠い、って感じだし。きっと仁王くんは私の存在すらも知らないんだろうなぁ。こないだちょっと助けてやった子、くらいには覚えてくれてるならもう十分。当たって砕けるか、そもそも当たらないか。
『私はどうするべきよ?春馬』
「…知るかよ」
うん、そーだよねー。
「でも、俺なら断わんねーけどなー、お前の告白」
『……何その乙女ゲームみたいな台詞』
「あれっておもしれーの?」
『いや、やったことないけども』
にしてもちょっときゅんってくる台詞だったね、今の。あーいう台詞をホイホイ私に向けて吐いてくれるなら悪くもないかもね。乙女ゲーム。
くすりと笑う私の前で、春馬はゆっくりと柳生くんの席から腰を上げる。ああ、もう自分の教室に帰んのかな?あれ、ところで春馬って何組なんだろ。むしろ何年?いつもメールで場所と時間指定されて会うくらいだけど、それにしても普段の遭遇率が低すぎる。もしかして他学年?下級生?……敬語使えよ。
ところで、と急に言葉を発した春馬に一時思考を中断させる。
「俺の苗字ちゃんと読める?」
『筬鵜丹…おさうに、っしょ?』
「じゃーフルネームなんか適当な紙に書いてみて」
『え、めんどい』
「はよしろ」
なんだかいつにも増して強引な春馬に引かれ、私はペンをとり裏紙に向かう。あ、これ今日配られたばっかのプリントじゃん。まぁいっか、どうせ親に渡しやしないし。
えーっと、おさうにはるまっと。
『で?』
「…お前ほんとにぶいなー」
こいつ超失敬。
私のペン(お気に入り)を奪い取りひらがなの上に何か数字を書き始めるそいつを見て、私はさらに眉をひそめた。このまま殴りたいんだけどいいかな?
そんな冗談時はさておき、私は再び裏紙が帰ってきた後すぐそれを読み始めた。えーっと…?
Aお
Dさ
Bう
@に
Eは
Fる
Cま
この通りに読めってことね…、めんどくさ。……に、おう、ま、さ、はる………。
……あり?
「おっと、お前さんもここまで来てわからん奴じゃなかったか、よかったよかった」
『…っはる、ま……?』
「さて、綾乃。愛の告白とやらはしてくれんのか?」
ぽかん、と。まさしくぽかんと空いた口が塞がらない。何だ、この超展開。黒髪から銀髪へと早変わりした春馬を凝視しながら私は思わず後ずさった。いや、むしろやっと地毛に戻ったのだろう。彼の、仁王雅治くんの地毛である銀髪に。
つまり、私のさっきの言葉は全部聞かれていて、本人に聞かれていて、わた、私は―…っ!!
『し、死にたい…』
「自殺ダメ、絶対」
『…仁王くん、楽しんでんでしょ』
「そー見えるかのぅ?」
『ばっちし』
くっくっと笑う彼が腹立たしい。そんなに人をおちょくって楽しいか、そうなのか。
…あー、もういいよ、そっちがそう来るならこっちも手を打とうじゃないか、畜生。半ばやけくそ気味にそう呟きながら、私はぱっと彼に手を差し出した。
『あ、なたのことが好きです。付き合ってください』
べたべたな台詞。言った直後に自分でもクサいと思った。
ドラマの見すぎかもしれない、けど。
「…っ、おん、」
この馬鹿な道化師さんにこんな顔をさせれたんだから一先ずは上出来ってとこ、かな。
曖昧ピエロ
―・―――・―――・―
こんなんにしよう!って決めて書いたら思いっきりズレた挙句かなりの長文になった件について
くそなげぇ上に甘くなくないこれ…?
曖昧ピエロ様との相互記念、のつもり、です…((←
うわもう駄文乙私…!
こんな駄文で申し訳ありません…っ!
罵倒も返品もバチ恋ですぜ((((;゜Д゜)))
――――――――――――
ほぎゃああああああ((
あいるさんより相互記念にいただきました!
あいるさん素敵な作品をありがとうございました……!
これからどうぞよろしくお願い致します!