||祭りの目玉


「うぉぉぉぉぉっ!!」

飛び込んできたお祭りの光景に、隣に立っていたブンちゃんが目を輝かせる。とってもかっこいい、私の彼氏さん。今日は一緒に夏祭りに来ています。

「食いもんいっぱいだぜぃ!」
「もぉ、ブンちゃんってば・・・・・・」

苦笑気味に彼を見つめると、子供みたいな笑顔が帰って来た。ほんとに、もう。可愛いんだから。

「行くぜぃ美衣菜!」
「え?あ、ちょっ、」

ぐい、と腕を引っ張られ、いきなり人ごみの中へ。そのまま食べ物のお店の前に止まり、何かを買ったと思ったらまた次のお店に。

止まって、買って、止まって、買って。

ちょっとちょっと、その山のような食べ物たちはいつ食べるの?
と、思ったらブンちゃんが人ごみを抜けたあたりで立ち止まった。手に持ったフランクフルトを食べ始め、あっという間になくなったと思ったらわたあめを食べだす。よく食べるなぁ・・・と思っていたらいつの間にかあれだけあった食べ物はほとんど無くなっていた。

「まだ食い足りねぇな・・・、あ、かき氷食べようかき氷」
「ええ、まだ食べるの!?」

ぐいぐいと腕を引かれて次はかき氷のお店の前に。美衣菜もいるか?と聞かれたけど、とりあえず首を横に振っておいた。なんだか、ブンちゃんは食べ物にばかり夢中でつまらない。

「んー、美味いぜいっ!」

あぁ、ブンちゃんが言うとほんとに美味しそうだね。なんて苦笑いしながらどんどんと減っていくかき氷を見つめた。さっきから食べ物にしか目がいってないよ、ブンちゃん。

「・・・ん?美衣菜も欲しいのか?」
「・・・・・・いらなーい」

なんだよ、美味しいのに。とブンちゃんが少しだけ残念そうに言って、またかき氷を一口食べる。はぁ、と溜息をついたら、やっぱりほしいのか?って聞かれた。そういう事じゃないってば!!

「・・・ブンちゃんのばーか」
「え?」
「もう知らない、私先に行くね」
「お、おいちょっと待てよぃ!」

ブンちゃんが慌てて追いかけてきて嬉しかったけど、その手にはしっかりかき氷が握られていてちょっと殴りたくなった。

「どうしたんだよぃ?急に」
「・・・ブンちゃん、食べ物ばっかりなんだもん」
「・・・・・・あぁ、なんだそういう事かよぃ」

呆れたようにブンちゃんが溜息をついて、私はそれにむっとしてそちらを見た。何か言おうと口を開いたところで、途端に冷たいものが口の中に入ってくる。苺の味がした。

「・・・ブンひゃん?」
「美味いだろぃ?」

私にスプーンをくわえさせたまま、に、と笑う。いやいや、そういう事じゃないんだってば!・・・まぁ、でも、

「・・・そだね、美味しいね」
「ほら、あーん」
「ん」

ブンちゃんが食べさせてくれるなら、良いや。


りの


「次あれ食おうぜぃ!!」
「ちょ、ブンちゃ、お腹いっぱ・・・げほっ、げほっ、」
――――――――――――
甘……い?
夏祭りシリーズの中では一番甘い気がします。

2012/3/5 repiero (No,30)

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