||迷子の居場所


五十嵐美衣菜。3年C組。クラス委員長を務める。所属委員会は図書、立海男子テニス部マネージャー。得意科目は数学で、苦手科目は社会。好きな食べ物、苺。嫌いな食べ物、茄子。明るい性格から、皆に好かれるクラスの人気者。
朝の日課は犬の散歩、よくリップとのりを間違える、寝る前の習慣は早口言葉に挑戦する事。先日A組の中村に告白されたらしいが、断った。理由は恋人がいるからだとか。ちなみにその恋人の名前は・・・

「連二ーっ!」
「・・・あぁ、美衣菜」

・・・恋人の名前は、柳連二。俺だ。3年C組の才色兼備委員長の彼氏は、3年F組テニス部レギュラーの俺。
笑顔で手を振りながら走りよってくる彼女に微笑み返して、彼女の到着を待った。今日は年に一度、3日連続で行われる夏祭りの日。今日はその1日目。今日と、最終日を彼女と過ごす事になっている。これから出店を見て回る予定だ。

「ごめんね、待った?」
「いや、大丈夫だ。・・・行こうか」
「うん!」

俺と手を繋いで歩く美衣菜は白のワンピースを着ていて、歩くたびにそれがふわふわと風に軽く舞った。ちなみに浴衣は最終日に着るから今日はまだ着ないらしい。「お楽しみ」なのだそうだ。

「少し、人が多いな」
「そうだね・・・。・・・きゃっ、」
「美衣菜!?」
「れ、れん・・・・・・、」

繋がれていた手が離れた。慌てて振返れば美衣菜は人ごみに流されて見えなくなってしまっている。人を掻き分け、そちらへと急ぐが、一向に美衣菜は見えてこない。
何度も名前を呼んで、人ごみに手を伸ばすけれど、こちらに美衣菜の手が伸びてくる事はなくて。ごった返す人ごみが憎らしい。無理矢理人ごみの中を進んでは見るが、それでも彼女は見えてこない。
それからすぐに人ごみは抜けたが、結局彼女は見つからなかった。

「はぐれた・・・・・・、」

まだ近くにいるだろうからと、とりあえず携帯にかけてみるが、なぜか出ない。たぶんデートだからとマナーモードにしているのだろう。とにかく早く見つけてやらないと、もし何かトラブルに巻き込まれたら危険だ。

「美衣菜!美衣菜ー!!」

彼女に聞こえるように、大声で名前を呼ぶ。返事は返ってこない。ざわざわとうるさい人ごみの中では、大きな声を出しても蚊ほどにしか聞こえなかった。俺は小さく舌打ちして、一度人ごみから離れた。

(データでは・・・・・・)

少し落ち着いて、頭の中にあるデータの中から彼女の居場所を割り出そうとしてみる。このまま人ごみに流されていけば、辿り着く場所は・・・

「あそこか」

ぽつ、と呟いて、俺はその方向へと走り出した。彼女が見つかる事を祈って。





「連二、連二っ・・・!」

必死に名前を呼んでも、彼の声が返ってくることはなくて。まっすぐに、彼のいる方向へと手を伸ばしているのに、こちらに手が伸ばされる事はない。彼の方に進もうにも、人の流れが強過ぎて進めない。
無理に進もうとすれば怪我をすると判断し、私は一旦流れに身を任せる事にした。

(落ち着いたら、すぐに抜けよう。早く連二のところに・・・・・・)

連二もきっと、私を探してくれてるはず。ちゃんと待てば、見つけてくれる。私はきゅ、と唇を結んで、ただ真っ直ぐに連二のいたほうへと視線を向けた。

「・・・、美衣菜!・・・美衣菜!」
「・・・連二・・・!?」

人ごみの向こうから聞こえた声に、ハッとなって慌てて自分も彼の名前を呼ぶ。何度も何度も、何度も何度も。でも聞こえていないのか、一向にこちらに来る気配がない。人の流れも一層増してきた。このままだと抜け出すことができない。

「連二・・・!」

必死に名前を呼んでも、ごった返す人ごみでは何の意味もなくて。私はそれに、ただキツく唇をかみ締めるのだった。





「最後まで来ちゃった・・・・・・」

けっきょく人ごみからは抜け出すことができず、なんとか抜け出したと思ったら、それは人通りの終着点である神社だった。多くの人は、夏祭りの日にこの神社と祭りのメイン会場を訪れていく。神社には出店もあるし、おみくじを引けたりもするから。

「連二ー・・・」

さすがに、ここまで来てしまうと見つけてもらえないかもしれない。もう少し、元いた場所に近いところまで歩いて戻った方が良いかも。人通りを避けて行く道なんて、一本入れば意外と見つかるものだし。

「よし、行こ・・・「美衣菜」・・・え、」

聞きなれた声に振り替える。するとそこには、珍しく息を切らして立つ連二の姿があった。それに目を大きく見開いて、少しうろたえる。まさかここまで、しかもこんなに早く来るとは思っていなかったから。

「え、あの、・・・連二?」
「無事で良かった・・・・・・」

急に抱きしめられて、私は頬を赤くした。こんな事をされたのは、久々の事だったから。私もおそるおそる彼の背に手を回して、きゅ、と抱きしめた。連二が痛いほどにキツく抱きしめてくれる。

「もう離れるなよ」
「うんっ!!」

そう言って連二は私の手をとり、強く握り締めた。私もそれに握り返して、そのまま2人で小さく笑った。

子の居


(どうして見つけられたの?)
(俺にお前の居場所がわからないとでも思ったのか?)
(・・・もぉ、連二ってば!)
――――――――――――
あとがきに書くことがない!

2012/2/12 repiero (No,12)

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