||笑うお化け


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」

聞こえてきた悲鳴に、私はまたビクリと身体を震わせた。それに赤也がケラケラと笑う。

「や、やっぱりやめようよぉ・・・!」
「んな事言っても、もう順番来るし」
「今引き返せば間に合うって!」
「無理」

ニヤニヤと赤也が笑みを浮かべた。私はそれに余計に身体を震わせる。中からまた悲鳴が聞こえてきて、私は耳を塞いでうつむいた。

「お次の方、入って良いですよ!」

係りの人の笑顔が恨めしい。私は赤也に手を引かれ、嫌々その中へと入っていった。私たちが今来ているのは、・・・要するにお化け屋敷だ。

中は酷く暗い。一歩外に出れば祭りの明かりでとても明るいというのに、どうしてこうも暗いのか。表情は見えないが、赤也は至極楽しげだった。私が怯える様子を見て楽しんでいるに違いない。

「うぅっ・・・」

入ってしまったものは仕方が無い。早足で歩いて、さっさと終わらせてしまおう。

「いっ、行くよ赤也!」
「なんだ、怖くねぇの?」
「怖いから早く行きたいの!ほら早く!!」

赤也の手をぐいぐいと引いて歩く。しかし彼はあまり乗り気でないようで、その足はのんびりと後ろをついてきていた。

「もう、赤・・・」

振り返った、瞬間だった。

「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

突然視界に飛び込んできたナニカに、大きな悲鳴を上げる。全身を悪寒が駆け巡るような感じの恐怖に、頭を抱え込んでうずくまる。

「お、落ち着けって美衣菜!」
「やだっ、来ないで来ないで!!」
「美衣菜!俺だよ、馬鹿!!」
「え・・・?」

お化けの言葉に顔を上げれば、そこには困ったような顔をした赤也の姿があった。私が呆然と彼を見つめると、赤也は安心したように息を吐いた。

「まっさかあんなにびっくりするとはな!」

ははっ、と笑う彼が取り出したのは、血まみれのミイラを模したお面。どうやら私はこれをお化けと思ったようだ。

「・・・・・・」
「・・・・・・えっと、怒ってんのか?」

赤也が、不安げな顔でのぞきこんでくる。私は体裁も何もかも気にする事無く、思い切り赤也に抱きついた。

「わっ・・・と、美衣菜?」
「・・・赤也のばか」
「!・・・はいはい、悪かったって」

赤也は優しく私の頭をなでてくれて、それに答えるようにず、と鼻水をすすった。赤也から離れた後も、彼は私の手を強く握ってくれた。

「よし、じゃあ一気に抜けるからな?」
「・・・うん」

にかっ、と赤也が笑う。私もそれに小さく笑みを返せば、一気に手を引かれた。転びそうになりながらも、それに走ってついていく。気がつけば、お化け屋敷はもう終わっていた。

「お、終わった・・・」

ほ、と息を吐いて周りを見渡すが、・・・可笑しい。赤也の姿がない。握られていたはずの手も離れている。・・・嫌な予感がした。

「赤・・・、「わっ!!」きゃぁぁぁ!?」

後ろからいきなり抱きつかれ、悲鳴を上げる。慌てて後ろを見れば、赤也がケラケラと笑っていた。・・・こいつ。

「あははっ、美衣菜って面白・・・「赤也?」・・・はい」
「後で、お仕置きだね♪」

晴れやかな笑顔を見せた私に、赤也は怯えるように顔を青くしていた。


うお


(この英単語全部覚えるまで、デートとスキンシップ禁止)
(100個近いんだけど)(何か言った?)(いえなんでも)
――――――――――――
個人的に赤也はビビリの方が好きです。

2012/3/27 repiero (No,37)

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