||08





【幸村side】
突然倒れた彼女を抱え上げると、見た目よりも少し軽い重量感が両腕を圧した。伝わってくる温かさに、ようやくこれが夢などではないということを実感できた気がした。ソファによこたう希さんの寝顔は、安らか過ぎるほどだ。

「・・・・・・」

俺は彼女をのぞきこむように見つめた。自然、悲しげに顔が歪む。彼女の呼吸は安定しているし、顔色も悪いわけではない。どうして倒れたのかはわからないが、とりあえず今の所は、大事になっているわけではなさそうだ。だからこそ冷静に、落ち着いて彼女のことを見つめられるわけなのだけれど、でも逆にそれが俺の心を絞める。
カチ、カチ、カチ。時計の音ばかりはぶれることなく、正確に進んでいく。時間は思うよりも、あっという間に過ぎ去っていった。

「・・・希さん」

ぽつりと、呟いた。

「俺だけ、だったのかな」

まるでその声に反応したかのように、数秒後、希さんが静かに瞼を持ち上げた。

[8/16]
[prev/next]

[一覧に戻る]
[しおりを挟む]

[comment]

[back]


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -