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「おはよう」

そう言われてはじめて、私は自分が今まで眠っていたことに気がついた。

「大丈夫かい?気分は悪くない?」

少し痛む頭を抑え、精市さんの顔を少し霞む瞳で見つめる。ここは私の部屋のはずだが、どうして彼がここに。数秒考え、そういえば自分が招き入れたのだったと今更のように思い出した。

「突然倒れたんだけど、覚えてない?」
「・・・はい、覚えてます。ご迷惑をおかけしてすみません」

少し喋ると、ズキン、と頭が痛んだ。飲み過ぎただろうか。自分でセーブはかけたつもりだったが、私もまだまだだな。精市さんは私のひたいに手を触れ、熱はやっぱりないみたいだね、と小さく呟いた。彼の手が離れるのと同時に、ゆっくりと身体を起こす。

「・・・どれくらい、寝ていましたか?」
「ほんと30分くらいだよ。今は12時過ぎくらいかな」

もうそんな時間か。私はため息と共に彼に頭を下げた。すると彼が笑い、それにつれてその青い髪が揺れる。前にも思ったことだが、相変わらず綺麗な髪だ。波のようにゆらゆら揺れて、どこか不安定な印象をもたせられる。

「・・・、あ」
「どうかした?」

ふと、頭に何かが過ぎった。不安定で不明瞭で、暗い空間。そうだ、これは先ほどまで見ていた夢だ。しかしそれ以上は何も思い出せない。その空間が一体、なんなのかも。

「・・・いえ、なんでもありません」
「そっか」

精市さんは呟くように言って、それ以上はもう、何も言わなかった。

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