||06





【希side】
どこか、暗がりにいた。
そこではぼんやりとした空間が不明瞭に広がり、私の働かない頭を苛ませる。よくよく見れば、そこが自室であることがわかるが、どうしてか、明かりはついているにも関わらず酷く暗い。まるで私の心をそのまま、投影してしまっているかのような暗さだった。どうやら私はソファに横になっているらしく、白い天井ともはや眩しくもない明かりがゆらゆら不安定に揺れていた。
これは夢か、現か。
青い髪の女の人・・・いや、男だろうか。その人が、自分をのぞきこんで悲しそうにしている。確かに瞼は閉じているはずなのに、視覚を除いた五感はむしろたしかに夢中にあるのに、でも目だけは、閉じたまま現実を見つめていた。瞼を透かして、私はじっと、彼の吸い込まれそうな瞳を見つめる。一体誰なんだろうかと、私はどこか答えを知りつつも、脳に問いかける。

『――、』

男の人が何事か呟く。しかし声はおぼろげにも聞こえない。当たり前だ、ここは夢のなかなのだから。ただ現実の光景が嫌にリアルにうつっているだけで、覚醒しきった視覚と思考力以外は、まだ呑気に眠っているのだ。・・・いや、この光景もまた、夢なのだろうか。だとしたら、なんと滑稽なのだろう。
そこでふと、意識が持ち上げられる感覚があった。私は目覚めようとしているのか。目覚めたくない、と思った。できればこのまま、この青髪の青年を眺めていたいと。しかしそれは叶えられることなく――

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