||05
「・・・・・・」
「・・・・・・」
流れるのは沈黙ばかり。静かな部屋は少しだけ気まずさを装っていた。ここに来てからどれくらい時間が経ったのだろうか。ちらりと壁に掛かった時計を確認すると、長針がふたつほど数字を移動していた。まだたった十分しか経っていなかったらしい。
「・・・、広いね」
もう何度も見回した部屋を意味もなくもう一度見回し、それからぽつりと呟いた。前の部屋と大して差はないけれど、でも俺は、この部屋を「広い」と感じた。
広い部屋。けれど質素な部屋だ。
彼女から返ってきたのは「そうでしょうか」という当たりも障りもしないような言葉で、思わず笑いそうになった。歩み寄るでも離れるでもなく、こうも一定の距離を保たれてしまうと、何をしていいかわからなくなる。
「ねぇ、希さんは――」
何を、言おうとしていたのか。考えるよりも先に口が動き、俺は何かを言わんとして唇を動かした。けれどその声は、途中で止まる。目の前に先ほどまでと全く変わらず座っている希さんの様子が、少し、可笑しかったように見えたからだ。
「希さん?」
返事はない。彼女の瞳はぼんやりと虚空を見つめている。そこにはもう、あの平たい生気すらも感じられない。俺は焦ったように身を乗り出した。と、
くるぅり。
彼女の目が、文字通り「くるり」と回った。それに俺が一瞬首を傾げた直後、
「・・・!?希さん!」
どさり、と、彼女はその場に倒れ伏した。
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