||03





場所と時間は変わり。

その日の放課後、もうすぐ部活動終了という頃合いに、俺は丸井と二人で彼女の話をしていた。

「あいっかわらずだな、相沢」
「まぁ、志穂らしくて良いじゃねぇか」
「顔見て早々に『外道』はねぇだろぃ!」

ぎゃん、と丸井が憤慨したように騒ぎ、なんとか宥めようと苦笑いで誤魔化してみる。すると俺たちの会話が物珍しかったのか、近付いてきた仁王に何の話をしているのかと尋ねられた。

「あぁ……、俺のクラスの相沢志穂ってやつの話だよ」
「そう! 超失礼な奴なんだぜぃ!!」
「なんじゃ、女の話か。俺も混ぜんしゃい」
「女!? 俺も混ぜて欲しいっす!」
「ふむ……、これは良いデータが取れそうだな」

見事に食いついた三人にため息をつくと、丸井は憎々しげな顔で鼻を鳴らした。まだ「外道」と言われた事を根に持っているらしい。内心ではあまり他の面々に彼女の話をしたくなかったけれど、彼らの様子を見るにどうやらそういう訳にもいかないらしい。これでアイツに何か迷惑をかけなければいいけど。

「相沢志穂、というと、たしかジャッカルは1年から同じクラスだったな」
「あぁ、そうだぜ。知ってるのか?」
「ふっ……、俺を誰だと思っている?」

渾身のドヤ顔だった。苦し紛れに相槌を打って、この空気をなんとかしようと赤也の方に助けを求めてみる。彼は俺の視線の意味を知ってか知らずか、ただただ話の続きを促してきた。

「……まぁ、志穂は良い奴だよ。少なくとも俺はそう思うぜ」
「えー、でもジャッカル先輩って基準が低いじゃないですか」
「それは言えてるぜよ。人が善過ぎるんじゃなか?」

そう言われても、自分ではよくわからない。しかし素直な赤也が大きく頷いているのを見るに、もしかしたらそうなのかもしれない、と小さく思った。けれど実際志穂は良い奴なのだし、魅力的な人だ。少なくとも俺はそう思っている。

「だーーーもう、あいっつのどこが『良い奴』なんだよい!? 外道外道って、どう考えても相沢の方が外道じゃねぇか!」
「そうなんか?」
「いや、そんなことはないと思うんだが……」
「ふむ、俺のデータを見ても、性格破綻者という感じはないな」
「本物と喋ってねぇからだろぃっ!!」

丸井がまた大声で叫んだ。するとちょうどそのタイミングで部室に真田が入ってきて、

「部室で何を騒いどる! たるんどるぞ!!」

と丸井の頭にゲンコツをかました。赤也はゲラゲラと指を差してそれを笑い、同じくたるんどるとゲンコツをくらわされていた。間近でその光景を見てしまった俺は正直気が気でなかったが、黙っていたおかげか何かされるということはなかった。運が良かったなぁ、なんて思う。

「……まぁ、とにかくあいつは良い奴だよ」

苦笑いを浮かべながら呟いた俺の声を最後に、その場は間もなくお開きとなった。

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