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翌日のことである。昼休み、トイレにでも行こうと廊下を歩いていた私は、見覚えのあるワカメ頭を見つけた。

「……あっ!相沢先輩!!」
「切原くん」

私を見るなり、切原くんは嬉しそうな顔をしてこちらに駆け寄ってきた。今日も彼の髪の毛はくるくるふわふわとハネまくっていて可愛らしい。にこにこと太陽のような輝かしい笑顔は見ているこちらまでもを元気付けてくれる。

「私に何か用事?」
「……」
「切原くん?」

私の問いかけにじっと黙り込み、こちらを真っ直ぐに見つめてくる切原くん。ちょ、そんな純粋な瞳で見つめられたら、私どうしたら良いかわからないじゃない。それともあれなの? 私みたいな非・純粋な奴は去ねってことなの? 汚物は消毒なの?

「……先輩、やっぱ可愛いっすね!!」
「へ?」

切原くんが笑顔でそんな天使すぎることを言い放つ。私は驚いて、しばし眼を瞬かせたあと、思わず緩んだ口元をそのままに「ありがとう」と答えた。切原くんの方がたぶん500倍くらい可愛いけど、そんな可愛い子に褒められて喜ばない手はない。

「……ん? 切原くん?」

なにやら顔を赤くして黙り込んでいるが、今度はなんなのか。可愛いって言ったことが恥ずかしかったんだろうか。ますます可愛いじゃないか切原くん。

「どうしたの?」
「……っ、な、なんでもないっす!! それじゃ!!」

彼の顔をのぞきこむと、切原くんは慌てたように顔をぱっと上げ、逃げるように走り去っていってしまった。……えと、なんだったのかな? あの子。

「前に来た時もだけど、けっきょく何の用事だったのかな」

わざわざ会いに来るくらいなのだから、何かしら用があるんだろうに。切原くんは相当な慌てん坊なのかもしれない。ふふっ、お茶目さんめ。

「……はっ、そうだトイレ」

気がついていたけれど、ひょっとして私はかなりの馬鹿なんじゃなかろうか。

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