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「……ってことがあってさー」

時間は、少しだけ進む。仁王さんたちを見送ったあと、私は教室に戻るなりジャッカルに先程の話をした。自分には関係のないことだが、彼らの「用事」というのが気になったのだ。まさか真田さんの鉄拳をくらいにいったというわけでもあるまいし。

「ジャッカル、あれってなんだったの?」
「んー……、部活のことなのは間違いねぇだろうけど。俺はなんも聞いてないぜ」
「えぇっ、ジャッカルのくせに」
「いやなんでだよ」

ジャッカルも知らないとなると、私にはもう打つ手がない。気になるが、まあどうせ関係のないところの話なのだから良いか。
昼休みはもうすぐ終わる。仁王さんたちもそろそろ用事を済ませた頃合だろうか。
ぼうっと、やはり思考と興味は彼らの方に傾けられながら、時計の針に目を向けた。意識はだんだんとそこに集中され、針音が徐々に大きくなり、規則正しいリズムに脳を支配されるようだった。
カチリ、カチリ、カチリ、カチ……「ジャッカル」

「……ん?」

聞き覚えのある、けれど明らかにクラスメイトのものではない声が耳に届き、私は一挙に現実に引き戻された。ジャッカルの方を見ると、なんと真田さんが彼に何事か言っているようである。私は身体をそちらに向け、今度は彼らの話す内容に意識を集中させた。

「部活が休み?」
「うむ。レギュラーメンバーだけだが、幸村の見舞いに行こうと思うのだ」
「そっか、そういやしばらく行けてねぇな」
「放課後、一度部室に集合してから病院に向かう。そのつもりで、できるだけ早めに集まってくれ。良いな?」
「あぁ、わかった」

ジャッカルがうなずき、真田さんもどうやら用事は済んだようで教室を出て行こうとする。しかし私はその前にあることに気がつき、真田さんを呼び止めた。

「……む? たしか、相沢と言ったか。何か用か?」
「あ、いやちょっと。しゃがんでもらって良いですか?」
「構わんが……」

真田さんが訝しげに首をかしげ、それから軽くしゃがむ。私はそれに近付き、髪の毛に手を伸ばし、ついていた糸くずをとった。

「なっ……」
「あ、もう大丈夫ですよ。お呼び止めしてすみません」
「……っ、」

笑みを浮かべてそういうと、真田さんは戸惑ったように顔を赤くし、それから居心地悪そうに視線を彷徨わせた後、小さく礼を言って去っていった。あれ、何か悪いことでもしただろうか。

「志穂は、優しいよな」
「へ? そう?」
「あぁ。……すげぇと思うよ」

まさかそれをジャッカルに言われる日が来るとは。苦笑いのジャッカルにドヤ顔でこたえると、軽く頭をチョップされた。ほとんど触れられた程度のチョップを受けた場所をわざとらしくさすって、私はわざとらしく文句を垂れた。
優しいのはどっちだ。

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2016/1/26 修正

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