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「あ、起きた……?」
「は、い」

保健室で目を覚ました赤也を、たくさんの人が見守った。あれからどうにも意識を取り戻さない赤也を、通りかかった柳に運んでもらったのだ。保険医の先生は遠巻きに眺めているだけだが、私を始め、テニス部のレギュラーは全員この場に集結していた。もう放課後だし、皆帰りたいだろうにと小さく苦笑した。なんだかんだ言っても、皆この後輩の事が大切なのだ。

「大丈夫? 赤也、失神しちゃったんだよ」

心配そうにそう言った私に、赤也は申し訳無さそうな顔を見せた。そんな彼を安心させるように、そっと彼の腕に布越しに触れる。その瞬間。

「うぐっ……、」

赤也が呻いた。

「赤也……?」

心配になって、また彼の方へと手を触れる。するとまた、

「ぐっ、ぁ……」

赤也が苦しみ出した。さすがにそこで違和感に気がつき、私は慌てて赤也から手を離した。すると先ほどまで苦しんでいたのが嘘のように元気になる。思わず眉を寄せ、何か口を開いたところで、背後からの声に遮られた。

「はいはーい、切原くんは目が覚めたのかな? そしたら皆ぞろぞろ溜まってないで保健室から出て行くこと。先生今日は用事があるから長居できないのよね。あ、それから切原くん。熱射病とかではないと思うけど、たぶん何かのショックで気絶しちゃったんだと思うから念の為に病院には行っておいてね。はーいわかったら早く出て行きなさい」

保健の先生の声だった。赤也が目を覚めたのを確認するなり、全員を追い出すつもりらしい。私たちは暫しそれに驚いたような顔をしたが、結局は赤也を連れて渋々保健室を出て行った。生徒が気絶したっていうのに、なんて適当なんだ。どうせ用事というのは彼氏かなんかだろうな、とその場にいた全員がそう思った。

「……まぁ、今日はとりあえず帰ろうか」

鍵を閉めて去っていく先生の後姿を見ながら、幸村が苦笑気味に呟いた。私はまだ心配そうに、訝しげに赤也の方を見つめていたが、何もなかった事にして赤也の隣に立った。手は繋がなかった。帰り際、仁王が赤也の頭に撫でるように触れていたが、赤也は至っていつも通りだった。

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