||38


「仁王、怪我、してない?」
「おん。めぐみは……「大丈夫だよ」ほぉか」

ひとまず互いの状態を確認すると、私も仁王も、酷い怪我はしていないようだった。身体を動かすと痛みはあるが、それも軽傷の範囲である。それに一安心してから……私たちの表情が、高橋さんの去った方を見つめて険しくなる。

「私、誰かに押されて落ちた気がするんだ」
「おん、俺もじゃ」
「一応確認するけど、仁王……「押しとらんよ」だよね。ごめん」
「高橋が押した可能性はなさそうじゃし、他に人がいたわけでもない」
「なのに、確かに誰かに押された……」
「幽霊でもおるんか、この学校は」

沈黙。言い知れぬ恐怖に、寒くもないのに身体が震える。笑っていた高橋さんの顔を思い出して、ズキリと、全身が悲鳴をあげた気がした。

「ともかく、保健室行くぜよ。手当てしちゃる」
「あ、うん……そうだよね」

慌てて笑みをつくって立ち上がり、痛みに顔が歪みそうになるのを必死にこらえた。階段を降りる足が自然と慎重になる。仁王もそれは同じのようで、壁に手を伝わせながらゆっくりと降りていた。

「……あ」

先に階段を降りきった仁王が、不意に声をあげる。そちらを見ると、仁王が何かを拾っている。それをこちらに見せて……私は、急いで階段をおりた。

[39/55]
[prev/next]

[一覧に戻る]
[しおりを挟む]

[comment]
[back]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -