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翌日の放課後、私たちは笑顔で部室を出た。これから一緒に帰るのである。まだ周囲に人通りは多かったが、あまり気にせず歩いていった。私は3年になった今でもマネージャーを続けていて、放課後は部室から直接赤也と帰っていた。昨日はたまたま帰りが遅かったが、普段は部活が終わってからすぐに帰るようにしている。

「そういえば、転校生。どうだったの?」

歩道に出てから、私は突然のように切り出した。昨日赤也から聞いた話を思い出したからだ。赤也はそれに少しだけ首を捻る。

「まー、可愛かったっすね。でもなんていうか、うーん……。見てて違和感みたいなのがある子でした」
「へぇー、違和感。どんな感じの?」
「俺もよくわかんないんっす。直感なんで」

赤也が苦笑気味に肩をすくめ、私もそれにやれやれと溜息をついた。それからいつものようにつながれた手を見下ろそうとして、そこで初めて気がついた。赤也と手を繋いでいない。

「……赤也、手」
「え? あぁ」

赤也が私の差し出した手を見てまた苦笑した。それから手に触れようとしたところで、

「ッ!」

ビクリと、赤也の身体が震えた。伸ばされていた手は引っ込められ、一瞬にして顰められた表情が私の手を凝視する。私は訝しげに首をかしげた。

「どうしたの?」
「い、いや……静電気が……」
「静電気? ……この季節なのに?」

冬であればともかく、まだ夏前だ。首を傾げた私に赤也は渋い顔で笑って、もう一度私の手に触れようとした。ところが、

「うぎゃぁっ!!?」

突然赤也が絶叫。というか、変な声をあげた。私の手に触れた瞬間だった。赤也は暫らく痛みを堪えるように触れた手を押さえて悶絶し、やがて落ち着いても息はぜぇぜぇと荒かった。

「だ、大丈夫……? そんなに酷いの?」

私は呆然と赤也を見てから、視線を自分の手の平へやる。私自身は全く痛みを感じなかったのだ。

「せ、先輩はなんともなかったんすか……?」
「う、うん……」

赤也が私の返答に眉を寄せる。自分はあれだけ痛かったというのに、私にはなんともなかったことが気に食わなかったのだろう。赤也は渋面で首を傾げたが、やがてまぁ良いかと私の手を再び取った。しかしその瞬間。

「うわぁっ!!」
「あっ、赤也っ!!?」

再び声をあげて赤也が飛び上がり、そのまま地面へと糸が切れたように倒れ伏した。慌てたように赤也をゆする私の声は、白目を向いた彼には届いていないようだった。

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