||29





時間はその翌日の昼休みまで進む。私はひとりで廊下を歩いていた。今日は仁王は気分が乗らないとかで屋上に行ってしまったが、今から赤也のところに行くのである。ゆっくりと歩きながら彼のことを考えればそれだけで楽しくて、小さく笑みが漏れる。しかし同時に思い出してしまうのは高橋さんのことで、昨日のあの恐ろしい目を脳裏にちらつかせては顔を顰めてしまっていた。
階段を下り終え、2年の教室が連なる廊下へと向かう。階段すぐそばの角を曲がれば、すぐにその廊下があって、少し進めば赤也の教室だ。

「うわっ!」
「わ、っっっ!?」

どん、と。
角を曲がった直後だれかにぶつかる。その瞬間身体中に「電撃のような」ものが走り、激痛と共に全身の感覚が一瞬薄らぐ。

(っ……う……!?)

なんだ、これ。目眩がして、目の前にあるものを見極めるのが困難なほどに視界が揺れる。頭が割れるように痛い。誰かの叫び声を直接聞かされているかのような強烈な耳鳴りと、重力を倍受けているような身体の気だるさが身を襲う。

「す、すんませんっ!! だいじょ……か!!?」

視界が、揺れる。指先の、足先の、そして全身の感覚が次第に抜けていく。男子生徒が何を叫んでいるのかすら、曖昧になっていく。
相手が誰だったのかはわからない。たぶん全く知らない人だったろうとは思う。けれど、その相手の焦ったような、そのような表情を視界に捉えたが最後、くるりとそれが反転し、私は意識を手放した。

[30/55]
[prev/next]

[一覧に戻る]
[しおりを挟む]

[comment]
[back]


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -