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めぐみ、と。よく見知った声で呼ばれ、振り返った。すると少し離れたところに仁王が立っていて、部活はサボるんじゃなかったのかと、そう思って首を傾げた。真田に鉄拳くらったぜよ、と苦笑しながら言う彼はどこか様子が可笑しく、そわそわとしていた。

「部活、けっきょく参加するのね? それなら日誌書き直すけど」
「おん、すまん。参加するぜよ」
「わかった」

きびすを返して部室へ行き、テニス部日誌をひらく。マネージャーである私は、毎日この日誌に部員たちの様子や主な活動内容などを書き込んでいる。欠席の欄に書いた仁王の名前を消し、日誌を閉じて振り返ると、いつの間にか仁王が立っていた。どうしたの?と尋ねる。仁王は厳しい表情で下を向いていて、こちらを見る目も、暗く焦りが滲んでいた。

「……何かあったの?」
「めぐみ」
「ん?」
「……気をつけんしゃい」
「へ?」

意味深にそんなことを呟いたあと、仁王はじゃあのと言って早々に部室を出て行った。ばたん、と戸が閉まる。後に残されたのは私だけだ。

「どういう意味……?」

ひとつ思い当たることがないわけではなかったけれど、それにしたってあまりに突然すぎる。後で仁王にまた聞いておこうと、ひとまずはそう思い直して私も部室を後にした。

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