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「あ、そうじゃ」
「ん? なに?」
「お前さん赤也を遊びに誘ってみたらどうじゃ?」
「は!? む、無理! 断られたら立ち直れない!」
「赤也が断るわけなか。さ、行くぜよ」
「ええ!? ちょっと、仁王!」
腕をぐいぐいと引かれ、むりやり赤也たちのほうへ引っ張られる。その様子にブン太が笑い、赤也はむっとしたような顔をし、高橋さんは、
「……っ!?」
「あははっ、仁王先輩たち仲良いですねっ!」
笑って、いた。しかしそこに確かに冷笑を織りまぜて。一瞬せすじが氷り、慌てて彼女から視線を逸らす。怖い、と思った。
「仁王先輩っ、なにやってんすか!? めぐみ先輩は俺のっすよ!」
「じゃーお前さんにやるぜよ」
「うわわっ……ちょっ、ちょっと仁王……」
軽く押し出され、赤也のすぐ前に飛び出る。そのおかげで、かろうじて赤也に隠れて高橋さんは見えなくなった。それに安堵してしまう。怖い。あの子が。
「ほら、早く赤也に言いんしゃい」
「え、そ、その……あの、今度どこかに遊びに行かない?」
きょとん、と赤也が目をしばたかせる。仁王はひゅうと口笛を鳴らし、ブン太は呆れたような顔をする。高橋さんは、わからない。そちらをわざわざ見たくはなかった。
「なんだ、もちろんいいっすよ!」
「え?」
はっと、赤也の声で我にかえった。赤也は笑っている。
「ほ……、ほんと? 良かった!」
「じゃー先輩、今日一緒に帰りましょうよ」
「んだよお前ら。俺の目の前でいちゃつくなよぃ!」
「いいじゃないっすか。先輩も彼女作ればいいんですよ!」
「できねーから言ってんだろ!? 嫌味か!」
……ブン太も可哀想に。
それじゃあそろそろ部活に行こうかと、仁王の方を振り返れば、彼はなにやら険しい顔で考え込んでいた。仁王?と声をかけてみる。顔があがった。
「すまんが、今日は部活サボるぜよ」
「ええっ!? ちょっと、仁王!」
去り行く彼に声をかけるも返事はこず、なんだ、サボんのかよ?というブン太の声だけがしっかり聞こえた。どうにも、嫌な予感がする。
「おい、あんな奴ほっといて部活行こーぜ」
「う、うん……」
促されるままに歩き出したものの、どうすればいいか……わからなかった。
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