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高橋さんの去った屋上で、私と仁王は先程のことについて話し合っていた。彼女が恐らく赤也を好きなのだろうというのは共通の見解。しかし、その先のことで意見が割れていた。あの、「私のモノになる」という表現についてだ。

「あれは絶対、好きだからこその表現だよ!」
「いや、違うぜよ。そんな軽いもんじゃない」

私は単純に、あの表現に関しては高橋さんが赤也を好きだから言った言葉なのだろうという風に捉えている。しかし仁王は違う。もっと色々な思惑があるだろうと、そういう風に言うのだ。そりゃあ、誰と電話してたのとか、ちょっと言い方が過激すぎだとか、思うところはあるけどさ。

「いいか、めぐみ、よーく聞きんしゃい」
「なによ」
「赤也は、何かに巻き込まれとる」
「だから、考えすぎだって……」
「じゃあ拒絶反応はどうなる? アレの正体はなんなんじゃ?」
「それは、」
「高橋恵理佳は危ない。……気をつけんしゃい」
「……、」

考えすぎだ、と一蹴しようと思ったが、できなかった。私の言葉はでかかって終わり、そのまま音にはならずに口の中で消える。仁王が私を見て少し微笑む。彼は私の頭を撫ぜて、大丈夫じゃ、と一言だけ言った。私が心配したことがわかったらしい。

「赤也なら、何かあっても自分で身ぐらい守れるじゃろ」
「映画ですぐやられるタイプって感じするけどねー」

そう言うと仁王は納得したようにうなずき、それから笑った。私も笑う。少しだけど、気分が明るくなった。

「じゃあ、そろそろ帰ろうか」
「えー、授業めんどいぜよ」
「だめ。行くよ」
「……プリッ」
「あ、こらっ!」

逃げ出した仁王をおいかけ、出入り口のところをおりる。仁王を追いかけ、屋上を走り回るうち、いつの間にかさっき不安に思ったことは忘れていた。気を使ってくれているのだ。仁王も。

「……ありがと」
「なんか言ったか?」

なんでもない、とお約束のように返すと仁王が顔を顰め、気になるから言いんしゃい、と私の肩を小突いた。私はふふ、と笑って、仁王が何か言うのも気にせず教室に走って戻っていった。

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