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「どーしよ……仁王」
「赤也も馬鹿なやつじゃのぉ……」

赤也に距離を置こうと言われた翌日、私は仁王に泣きついた。今度という今度は、私も限界だ。じんわりと涙が浮かんできて、思い出すだけでまた悲しくなってくる。仁王はそんな私の頭を撫でてくれたが、どうせなら赤也が良い、と漏らすと頭をはたかれた。ごめんって、そんなに拗ねないでよ。

「仕方ないのぉ……、めぐみ、行くぜよ」
「え、ちょっと、どこに?」
「えーから」

いつになく強引な仁王に連れられ、つれてこられたのは赤也の教室だった。距離を置こうって言われたばかりなのに、どうして。でも隣に立つ仁王の表情は真剣で、決して冗談じゃないってことは見ててわかった。

「見ててみんしゃい」
「でも、」
「赤也は気付かんよ」

確かにまぁ、そうかもしれない。私は赤也の方へと視線を送った。彼は高橋さんとなにやら話し合いをしていて、時々赤也の方から高橋さんに触れてみては、がっくりとうなだれていた。何の話だろうか。やっぱり、私のことなんて、嫌いになってしまったのだろうか。

「ほぉ……、なぁ、めぐみ、あいつらの今の会話、聞こえたか?」
「え?いや、全然。よく聞こえたね」
「俺の聴力をなめたらあかんぜよ? どーやら、赤也は女子恐怖症を治そうとしとるみたいじゃな」
「……そうなの?」
「おん。わざわざ一度お前さんと離れたんも、赤也なりの決意じゃなか?」

……赤也の、決意?
赤也は、こちらから見る限りでも必死そうだ。高橋さんは、その隣で笑っている。楽しそうに、嬉しそうに。……私、いま、あんな風に笑えてるのかな。

「……めぐみ、そろそろ帰るか?」
「うん。ありがとう」

仁王は私の様子を察してか、そう声をかけてくれた。だめだな、私。せっかく仁王が気を使ってくれたのに。

「高橋恵理佳、か」
「なに? どうしたの?」
「……いや、なんでもないぜよ」

呟いた仁王の目は、笑っていなかった。

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