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屋上には、少し蒸し暑いような空気が漂っていた。校内はまだ涼しいほうだが、じきにそうもいかなくなる。もうすぐ私の大嫌いな夏が来る証拠だろう。あぁ、ほんと、嫌になる。
私は屋上に誰もいないことを確認して、フェンスの方に歩み寄った。眼下には、あまり見慣れない町の景色が広がる。慰め程度に風が吹き抜けていくのを感じ、ふ、と息を吐き出した。いつまで経っても、ここの空気には身体が慣れてくれない。ここに転校してきて、もう3週間も経つというのに。

「……あぁ、もしもし?」

私は携帯を取り出すと、目当ての相手に電話をかけた。電話の向こうからは、以前聞いた抑揚のない声が返って来る。

「……あはっ、当然じゃん。うん、……うん」

電話の声が告げる。私はその言葉に笑みを浮かべ、それから楽しそうに笑った。唇をゆったりと動かして、言葉を紡ぐ。

「うまくいってるよ」

にこり、というよりはにたりと唇を持ち上げて笑って、ピ、と電話を切った。それからもう一度町の景色に視線をやって、しばらくそれをうっとりと眺める。
クス、と笑った声は誰に届くこともなく、蒸し暑い空気に溶けていった。

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