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それからまた時間は経って、私は仁王と共に、再び2年生の教室をおとずれた。赤也の教室ではない。高橋さんの方だ。私たちが高橋さんを呼ぶと彼女は驚いたような顔をして、うかがうようにこちらを見た。別にいじめるわけじゃないから安心して来なさい、うん。

「高橋さん、私たちのことは……わかる?」
「あ、はい。赤也の彼女の成瀬先輩と、テニス部の仁王先輩ですよね?」
「うん、そう。ちょっと相談したいことがあるから、来てくれないかな」
「相談? ……わかりました」

快い返事にほっと息をついて、私たちは屋上へと向かっていった。





彼女を呼び出したのには、理由がある。
仁王との話し合いの結果、このまま赤也と高橋さんの様子を見ていても、状況は何も変わらないのではないか、という結論が出た。それどころか、この間「一緒に帰らないでくれ」と言われたように、私と赤也の関係が悪化していくばかりなのではないか、という話になったのだ。そんな状況では、きっと「拒絶反応」も治りはしないだろう。治ったとしても、その頃には最悪私と赤也は別れているかもしれない。そんな風になるのは絶対に嫌だった。
その最悪の事態を避けるため、私と仁王は、とうとう高橋さんについて調べを開始することにした。

「相談っていうのは、赤也のことなんだけど……」
「……赤也、ですか?」
「うん。高橋さんも気づいてると思うけど、赤也は、女の子に触ると痛みを感じたり、身体が痺れちゃったりするみたいなの」
「あ……、はい。それは私も、知ってます」
「当然、赤也もずっとそうだったわけじゃないし、そうなったのは極最近なんだけど……なんとか、そうなった原因を知りたいんだ」
「……それで、私に?」
「うん。高橋さんの時だけは、そういうことがないから」

高橋さんは話を聞き終えると、しばし黙し、考え込むように軽く下を向いた。私と仁王も黙ってそちらを見ていたが、やがて、高橋さんが顔をあげた。

「わかりました。できることはします」
「ほんと!? ありがとう!」
「俺からも礼を言うぜよ」

ほっ、と仁王と2人で息をついて、顔を見合わせて笑い合った。これでひとまず、何かがわかってくるかもしれない。そうしたら、赤也も……

「じゃが、原因っつってもなんなんじゃろうな」
「そうだよね。全く手がかりがないし」
「赤也の演技とかじゃったら殴り飛ばしてやろうか?」
「あ、お願い。でも赤也じゃ演技なんて無理でしょ」
「なんでじゃ?」
「だって赤也だし」

うわ、失礼な奴じゃな、と仁王に顔を顰められたが、私がふざけて「てへぺろ!」とやると、仁王も笑ってくれた。っていうか、仁王もそう思ってるくせに。

「ちなみに、高橋さんはなんで自分だけ反応が起こらないんだと思う?」
「うーん……そうですね、あえて言うなら」

一拍置いて、高橋さんが顔を上げた。とびっきりの笑顔を浮かべて。

「運命、なんじゃないでしょうか!」

悪意など微塵も感じられぬ笑顔とその一言に、ぴし、とその場の空気が凍りついた、気がした。

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