||11





それから1週間の間、赤也の教室を毎日たずねた。その度にそこには高橋さんの姿があり、私と仁王はそれを遠目に傍観していたが、彼女と赤也が日に日に仲良くなっていっているのは目に見えていた。赤也も「彼女だけは大丈夫」ということを知らずの内に察し、気を許しているらしい。元々女の子好きなことが災いしたのかもしれない。
赤也が彼女と仲良くなること自体は、別に問題はなかった。なぜ彼女だけは「反応」が起きないのかはわからないが、なんにせよ、赤也が女子恐怖症のままでは困る。高橋さんを通じて、せめて恐怖症だけでも治ってくれれば、と私は考えている。
しかし、そんな悠々とした事が言えたのは、今日までとなった。

「先輩、あの……お願いがあるんですけど」
「ん? どうしたの、赤也」

珍しく、彼が自ら私の教室までたずねてきた。以前ならば珍しくなかったことだが、反応が出始めてからは彼もめっきりここに来なくなっていた。
私は赤也に微笑みかけ、何の用事かと首を傾げる。一歩歩み寄った私に、赤也は少し怯えたように後ずさった。相変わらず、高橋さん以外の女子にはこの調子だ。

「……今日、一緒に帰らないでもらえますか」
「え?」
「ッ、すいません! じゃあ、そういうことで」
「あ、ちょっ……」

私はしばし呆然と、彼の後姿を見送った。突然のことに頭がついていかず、ようやく理解した頃にはとっくに赤也の姿などない。

(……「一緒に帰れない」じゃなくて、「帰らないでくれ」、か)

いつのまに、私たちの溝はこんなにも大きくなってしまったのだろうか。たぶん彼は、私と一緒にいることで、「反応」が起こることが怖いのだろう。彼に「拒絶反応」の話はしていないが、赤也は本能的に、そのことをとっくに理解している。

「ふられちゃった気分」

ぽつ、とそんなことを呟いて、机に突っ伏した。涙を流すとか、そんな風になるほど脆くはないけれど、でも、彼の言葉がショックで。

それから私たちは、一緒に登下校をすることがなくなった。

[12/55]
[prev/next]

[一覧に戻る]
[しおりを挟む]

[comment]
[back]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -