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『じゃあね、桐原くん!』

そう言って去っていった少女のことを思い浮かべながら、赤也の隣を歩いた。現在彼との距離は1mに近く、歩道の端と端を並んで歩いている。

(……きょぜつはんのう)

昨日の不可解な光景。いや、本来あれが正常な光景ではあるが、今の赤也や私たちにとっては、異常事態そのものだ。
直後に行ったそれについての仁王との議論の末、私と仁王は、ある結論に辿り着いた。

「あーかやー」
「はい……、うぎゃっ!!」
「っ!!」
「なっ、なにするんっすか!?」
「あ、ご、ごめん……」

仁王と出した答えは、こうだった。
今までの赤也の様子からして、彼が女の子への拒絶反応のようなものを起こしてしまっているのはまず間違いないだろう。確かではないが、今考えられる答えのなかではそれが一番ふさわしい。
けれど昨日、高橋さんにはそれが起こらなかった。
ならば、もう一度女である私が赤也に触ってみて、反応があるかどうかを確かめてみなければならない。それでもし反応がなければ……拒絶反応は、「消えた」ということになる。しかしもし、今までどおり反応があるのなら。

「……ねぇ、赤也。昨日の、高橋さんって子、どういう人なの?」
「さぁ……、俺も昨日初めて喋りましたから。特に噂も聞きませんし。なんでですか?」
「あ、ううん。ちょっと気になっただけ」

ごまかすように笑ってみせる。赤也は一度うなずき、それきり黙ってうつむいた。

『もし、赤也に触れてみて反応があれば……、あの高橋恵理佳とかいう女を、調べてみる必要があるぜよ』

脳裏によぎった言葉に眉をひそめ、私もまた、うつむいて口を閉ざす。
調べなければならない。高橋恵理佳について、そして、赤也の拒絶反応についても。

それから学校につくまでの間、私たちが会話を交わすことはなかった。

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