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「……ねぇ、赤也」
「なんすか?」
「……なんでそんなに遠いとこ歩いてるの?」

私は半ば呆れたように溜息を零した。

いつものように赤也と一緒に下校しているわけだが、どうにも可笑しな点があるのだ。例の反応が起こるようになって、女の子を避けだしたのはわかる。彼自身あまり自覚していなくても、傍目からみればあからさまだ。そして、それが私も「避ける対象」に含まれてしまったのは悲しいけれど仕方のないこと。それも、わかる。

……だけど。

「さすがにこれはないんじゃない……?」
「え? なんか言いました?」
「いや、なんでもないよー」

私は一応笑みを取り繕ったが、それに同じく笑みを返す彼の表情もまた、ぎこちないものだった。彼は現在、私と3mぐらい離れたところを警戒するように歩いていて、その姿はまるでヘタレ。というかヘタレ。付き合って間もないカップルじゃないんだから、いくらなんでもそんな風に怯えなくても良いと思うんだ、私は。

(そりゃ、怖いだろうけど)

そこまでして避けられると、さすがに傷付く。私だって人間だし、それでいてひとりの女の子で、赤也の彼女なわけだ。今までずっとうまくいってたのに、それが僅かな間にここまで壊れてしまうのは、辛いし悲しい。

「女心のわからんやつめ」
「なんか言いましたー?」
「なんでもないって!」

そうだ、この際、彼に何か嫌がらせをしてやろうか。この距離だし、今なら何言ってもばれない気がする。

「……このワカメ野郎」
「誰がワカメだ!」
「うそっ!? 聞こえたの!?」
「当り前じゃないですか!! 酷いっすよ先輩!」

恐るべし地獄耳。

「……赤也」

相変わらず後ろでプリプリと怒っている赤也に、私はそっと悲しげに息を漏らした。

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