||尽きない疑問
◇
よく目立つ銀色が、夕日に照らされて輝いた。
今日もまた筆を走らせながら、彼のことを思い浮かべた。少し水を含ませすぎた筆が、画面に水滴を落とす。私は慌ててそれを拭き取った。ぼーっとしすぎたらしい。
パレットから緑を拾って、画面にのせる。青と黄色を混ぜて作った独特のこの感じが好きだった。
ふと顔を上げる。遠くにあるテニスコートで、銀色が輝いていた。沈み始めた太陽がそれにオレンジ色の光を当てる。綺麗だった。できればそれを近くで見てみたかったけれど、あのギャラリーに紛れるなんてとてもじゃないけど私には無理だ。っていうか部活あるし。
それにしても、気になることがある。仁王はなぜ、私の絵に執着するのだろうか。人の絵を見たくなる気持ちはわかる。でもだからって、わざわざ絵の様子を見に来るまで「見たい」と思うだろうか?私はプロでもなんでもない。
彼お得意のナンパかとも思ったが、それにしては少し違うような気がする。っていうか、得意かどうかは私知らないし。でも得意そうじゃん、なんとなく。
パレットから拾った橙を、薄く画面に載せた。下に重ねた色に、少しそれが溶けていく。浮かび上がった色彩に、小さく笑んだ。
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