||曖昧な時間





たくましい体つきは一体誰がモデルなのだろうか。

さぁぁぁぁ。翌日も雨が降っていた。昨日ほどの酷さではなくとも、ずっと降り続けているとどうも気分が憂鬱になった。夏だというのに雨が降るなんて。涼しいといえば涼しいが、じめじめとした感じに嫌気が差した。
そんな天気では当然ながら外には出れなくて、私は美術室でけだるい時間を過ごしていた。美術室に人はそう多くない。校内で写生を行っている人もいるから、そういう人達は昨日までと同じく写生に行っているのだ。
写生をすることは、美術部の活動のひとつだった。別に誰かに見せるわけでも先生や部長にチェックを受けるわけでもなく(というか私が部長だ)、練習として、写生を行っている。使用する画材は個々の判断。鉛筆で描く人もいれば、私のように水彩絵の具を使ったり、色鉛筆を使う人もいる。3年生はそろそろ部活の引退に向けて引退作品を作っているが、私はまだ手をつけていない。どうしても、この絵だけは完成させたかった。

「この胸像、無駄にたくましいね」
「ほんと。惚れちゃいそう」

美術室におかれた、ハゲの胸像。私は今それのデッサンを行っていた。胸像なので大体胸の半分ぐらいまでしかないのだが、やたらとたくましい。美術室にある奴って絶対筋肉フェチにはたまらない感じの筋肉してるよね。
鉛筆を紙面に走らせる。友達とくだらないことを話しながらデッサンをしていたら、いつの間にかその胸像のおでこに「肉」と描かれていた。あれ、可笑しいな。友達が「できたの?」と私の紙を覗き込んできて、それからその「肉」の文字を見て苦笑いを浮かべた。

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