||気まずい空気





彼は困ったような笑顔を浮かべた。

呆然と一連の流れを見ていた私は、その場から動けずにいた。仁王は女が去った後、どこかに電話をしているようだった。苦笑いが漏れているのが見える。視力だけは良いんだ、私。
下手に動くこともできなくて、とりあえず私は彼の方を見ていた。仁王がどこかに去るまで待とう。っていうか、なんだったんだろうさっきの。完全に修羅場だったよね、うん。
仁王までの距離は100mくらい。廊下の端から端までだから、けっこうな距離だ。このままいけば、ばれない。

そう考えていた私が甘かった。

(・・・げ)

身体を拭きながらそちらを見ていた私を、仁王が振り返った。驚いたような顔をしている。私は動きを止めた。とりあえず苦笑いをしてみたが、果たして彼にはそれが見えているのかどうか。視力は悪くない筈だけど。
仁王は私の方を見て、ちょっと困ったような笑顔を浮かべた。そのまま彼は廊下を去って行った。

けっきょく、あれはなんだったんだろうか。

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