||変わらない愛


※この作品は「キャンバス」の番外編です。極力本編をお読みになった後での閲覧を推奨いたします。

「うわ・・・すごい・・・・・・」

どん、と。あえて効果音をつけるとしたら、それが相応しいであろう堂々たる態度で、僅か数歩先に座り込む銅像。細かな細工、その先には何があるのか、彼方を見つめる精悍な顔立ち。それが全身赤茶けた色をしていることさえ考えなければ、生きているのかとすら見まごうほどのリアリティだ。無題、とされた作者も不明なこの作品の前で、私はしばし足を止めて呆けていた。

「ほー、見事なもんじゃの」

隣に立つ彼は軽くそう呟き、それから私の方を見てクスリと笑った。真剣じゃのぅ、なんてそんなことを言いながら。

「だって・・・、凄いと思いませんか、仁王さんは」
「そりゃ、思うぜよ。けど、あんまりお前さんが喰いついとったもんじゃからの」

仁王さんの表情は楽しげだ。なんだか少しからかわれているような気がして、むっとして視線を逸らした。一応デートとは言え、せっかく美術館に来たんだから。堪能しないと。

「なー、お前さん、もしかしてデートっちゅうこと忘れとらん?」
「忘れてませんよ。それよりも見ることに忙しいだけで」
「・・・まぁ、俺がつれてきたかっただけじゃし、ええけど」

そういう仁王さんは苦笑気味で、そこまできて少し申し訳なくなって彼の方をしっかりと見た。普段学校にいる時とは違う、ゆったりとした優しい表情は、私をなんだか落ち着かなくさせる。胸が熱くなってきて、無性に目を逸らしたくなってしまうのだ。
これがきっと、私が彼に抱く「好き」という気持ちのせいなんだろうというのは、私も彼も、よく知っている事実であった。
今日は、私たちが付き合い始めてから何度か目になるデートの日だ。それも、美術館での。

「はー・・・、楽しそうじゃのう」
「楽しいですよ。仁王さん、連れてきてくださってありがとうございます」

微笑めば、彼が驚いたようにして頬を染める。それがなんだか可愛くて笑うと、ため息をつかれそっぽを向かれてしまった。

「・・・あーもう、お前さん、可愛すぎじゃき」
「へ?」
「なんでもないぜよ。ほら、手」
「あ・・・はい」

伸ばされた手を恐る恐る取ると、力強く握られる。つい最近まで彼のことを描き続けていた右手が、その彼によって包まれる。かぁ、と、顔が熱くなるのを感じた。

「お、この絵の人、愛海に似とらん?」
「に、似てません!」


わらない


いつも遠くから眺めるしかなかった彼の温もりを感じて、あぁ、好きだな、なんていう小さな呟きがもれた。それに振り返る彼は、私の大好きな嬉しそうな微笑みを浮かべていた。
――――――――――――
お待たせしてすいませんでした(スライディング土下座)
相変わらずgdgdでごめんなさい、お楽しみ頂ければ幸いです。

※この作品は10万hitフリリク企画で書いたものです。

2013/6/15 repiero (No,132)

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