||憂慮





翌日の昼休み。私は教室を逃げるように飛び出し、とぼとぼと廊下を歩いていた。別に何かあったわけじゃない。単純にうるさかっただけだ。今はこうして静かな場所を求めて歩いているわけだが、なかなか思ったような場所が見つからない。カップルがいたり授業でよく使うような教室だったり、他の生徒がすでに寝場所などとして使っていたり。あぁもう。私はいらだったように溜息を零した。

「……ん、誰か、いる?」

あまり人気のない廊下に差し掛かったとき、不意に人の気配を感じて角から顔をのぞかせてみた。ここはよく告白に使われるような場所だから、もしやそれか。気になって注意深く見てみると、たしかに廊下の奥に2つの人影が見えた。女の子と、男の子。やっぱり告白だ。

(あんまり見ちゃ悪いよね)

自分からのぞいておいてなんだが、そう思い直して私は首を引っ込めようとした。しかしかすかに聞こえてきた声に、動きを止める。この声は、まさか。

「……で……っ!」
「……が、私には……」

やっぱりそうだ。女の子の方は誰かわからないけれど、もう一人は柳生さんに違いない。どうしてこんなところに。いや、告白か。どっちが告白されているのだろうか?女の子か、柳生さんか。それがもし「女の子の方だったら」という考えが過ぎり、さっと顔が白くなった。

(柳生さんが、告白?)

様子をしばらく見てみる。しかし、どうやら違ったようだ。告白をしたのは女の子の方で、柳生さんはされた側らしい。女の子が泣きそうな顔をして走り去っていくのがなんとなく見えた。それに少し安堵してしまったのは、一体どうしてか。

(なんか、ざわざわする)

自然に後ずさって、そっと俯く。もやもやと嫌な気持ちがむくりと頭を起こしたのを振り払うように、その場を足早に離れた。

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