||告白





それ以来、廊下での悪戯は完全になくなった。噂によると、……あくまでも噂なのだが、どうやら仁王さんは、柳生さんを初めとしたテニス部の面々+先生方にこってりと絞られたらしい。前にぼろぼろになって廊下を歩いている彼を遠目に見たから、恐らく本当のことだろう。残念ながら確認は取れないが。

「っるさい……」

ざわざわとした教室を出て、ふらふらと廊下を歩いていく。通りかかる人の多くは、私を見てなにやら何かを話していた。
柳生さんにお姫様だっこされた件はあっという間に学校に広がり、色々な人に質問攻めにされたのだが、その後に仁王さんの悪戯の話も噂になっていった為、多くの人には同情の目を向けられるだけで終わった。未だに時々、厳しい目を向けられたり質問をされたりすることがあるのだけれど。
ひとまず私の静かな人生が守られたことに安心した。悪戯の噂のせいで、例の廊下に少し人通りが増えてしまったことが唯一の心残りだろうか。学校に居場所がなくなってしまったかのような気分だ。

「…………」

しかし今の私には、そんなことよりももっと気になっていることがあった。

(柳生さんに会ってない)

かれこれ1週間、いや、もう2週間は経ったかもしれない。仲良くなれたと思ってはいたが、所詮悪戯にはじまり悪戯に終わる関係だったのだろうか。そもそも私が勝手に彼に好意を抱いているだけで、柳生さんにとっては私などすでに忘れ去られた存在なのかもしれない。あぁ、せめて彼が私のことを覚えてくれていますように。そう願うものの確認するすべは残念ながら何もないわけだ。

「……あ」

久しぶりにふらふらと訪れた例の廊下で、私ははたと動きを止めた。まさに悪戯の現場となっていた場所に、柳生さんが立っているのが見えたのだ。柳生さん以外に人はおらず、今は絶好のチャンスだ。私は彼に歩み寄って、恐る恐る声をかけた。

「……おや、関さん」
「お久しぶり、です」
「会えて良かった。ここにいれば会える気がしていたんです」

にっこりと柳生さんが微笑んで、私に一歩歩みよった。柳生さんが、私に会いたいと思ってくれていたなんて。もしかしたらリップサービスかもわからないが、でも純粋にその言葉に嬉しくなった。顔を赤くして私が俯くと、彼は一瞬首をかしげ、しかしすぐにまた微笑んだ。

「関さん」
「は、い」

顔をあげると、柳生さんと目があった。眼鏡のせいで瞳は見えないが、でも、柳生さんがこちらを見ていることは確かに感じとれた。と、彼が口を開く。

「突然ですが……、好きです」
「は……、あ、え?」
「よろしければ、私と付き合ってください」
「へ……え!?」

いつも通りの穏やかな微笑みを浮かべ、彼が私を抱き締める。彼の言葉どおり、「突然」過ぎることに頭がなんだかついていけない。ええと、柳生さんが私に好きと言って、付き合ってくださいだなんて……、あ、そうだ、こういう時は相手に返事を返さなくちゃいけない、そう、私の返事は、

「わ……私も好きです!」


END


(ついと口から出た言葉に、彼が驚いたような顔をする。)
(顔を真っ赤にして彼の胸にうずまる私を、彼は優しく抱き締めてくれた。)

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