||好きって気持ちが言えなくて


好きって伝えるのは、案外難しかったりする。

私の恋した人は、校内でも有名なイケメンさん。ちなみに私の隣の席です。
なんていうのかなぁ、彼は・・・仁王君は、何から何まですごくかっこいいんだよね。例えば意思を感じさせる瞳だったり、にやりと笑った口元だったり、とても綺麗な銀髪だったり、髪の毛を結ぶその仕草だったり。
少し言葉を交わしてみれば謎の言語は飛び出すし、時々騙されちゃったりもするけど、私はそこがまた彼の魅力なんだろうと思ってる。・・・え?病気?うん、知ってる。

「・・・あ、おはよう仁王君」
「あぁ、おはようさん」

今日も登校して来た仁王君に挨拶する私の動きは、どこかぎこちない。っていうかかなり。ロボットダンスですか、これは。
って色々考えてたら、仁王君が噴出した。原因はなんだ、って考えたら、どうやら私の動きらしい。さしもの仁王君もこの動きには耐えられなかったんだね、良い事?知ったよ私!

「あれ、今日もサボり?」
「おん。授業ダルいんじゃ」
「そっか、先生に言っとくね」
「いやそれはだめじゃ倉木。なんとか誤魔化しといてくれんか?」
「えー、だめだよ仁王君!それやってバレたら私の首が飛・・・」
「どんな学校じゃそれ。とにかく、頼んだぜよ」
「はーい」

と、まぁいつも通りな会話をして、席に着く。教室の皆はもはや気にしてない。私と仁王君って、常にこんな感じだから。
・・・ちなみに、私はファンクラブの子とかにいじめられた事がないんだ。けっこう隣になってるし、仁王君とも仲が良いつもりなんだけど。いや、いじめられたいわけじゃないけどさ?でも不思議。たぶん私なんか論外なんだろうね。

「それはそれで悲しいな」

ぽつりと呟いてみたけど、隣がいないから誰も返してくれない。仁王君いないとやっぱ寂しいね、これ。
暇だなーなんて考えながら机に頬杖をついていたら、近くで話していた子達の会話が聞こえてきた。

「ねぇねぇ、聞いた?仁王君、あの美人で有名なえみちゃんに告られたんだって」
「えー、まじ?でもどうせ振ったんでしょ?」
「うん、ぽいよー。てか仁王君って誰かと付き合ったりするの?」
「前は色んな子と付き合ってたのにねー。好きな人でもできたのかな?」
「うわ、それショックなんだけど。ってか好きな人できたなら告れば良いのに」
「仁王君なら絶対オッケーだよねー」

・・・なにそれなにそれ。それってどういう事だ。
仁王君に好きな人がいる?誰の事?この学校?それとも違うとこ?同学年?先輩?後輩?ねぇ、誰なの?
めまぐるしく考えが頭を巡っていく。でもこんなのいつもの事。いつも違う噂に私は頭を悩ませている。仁王君の心境なんて私にわかるはずもなく、ましてや仁王君に私の手が届くはずもない。

(でも、好きだから)

彼の事を考えたり、知ったり、悩んだりするのは自由だ。無理だとわかっていっても、それをするだけならどこまでも自由。だから私はこうやって頭を悩ます。仁王君にいつか届くとバカみたいに自惚れて。

「・・・あれ、舞?どこいくの?」
「ちょっとトイレ・・・」
「大丈夫?顔色悪いけど」
「うん・・・ごめん、先生に言っといてもらえる?あと仁王君の事も誤魔化しといて」
「わかった、無理しないでね?仁王はサボりって言っとくわ」
「うん。・・・って、サボりはだめだよ〜」
「はいはい、わかったから。早く行きな?」

友達に押され、私は背を丸めて教室を出た。なんだか本当に気持ちが悪い。でも保健室に行く気にはなれなくて、私は無意識の内に階段をのぼっていた。

(どこ行くつもりなんだろ、私)

自分でもわからない。でもここは3階だから、この先には屋上しかない。そして屋上には、もしかしたら仁王君がいるかもしれない。だから向かってるのかな。

「・・・あれ、倉木じゃなか?」
「あ・・・におーくん・・・・・・」
「どうしたんじゃ、顔色悪いぜよ」
「うん・・・大丈夫ー」

やっぱり屋上には仁王君がいて、扉を開けて数歩歩くなり声をかけられた。仁王君は本気で心配してくれてるみたい、なんか悪い事したかも。会いたかったからって迷惑だよね。体調悪いの見せ付けるみたいにさ。あぁ、私ってほんと馬鹿。

「仁王君ー」
「なんじゃ?保健室行くんか?」

仁王君ってば、なんかお母さんみたい。よく思うけど、他の人に対する態度と私に対する仁王君の態度って全然違う。他の人にはひょうひょうとした感じだけど、私にはこの通り。
普段の姿と今の姿、両方知ってる私にとってはそれが少しだけ可笑しい。どうして違うのかはわからない。でもきっと、これは子ども扱いされてるって事だろう。あぁ、それって私が仁王君と釣り合わない事を態度で示してくれてるの?そんな親切いらないよ。

「仁王君」
「なんじゃ」

もう一度名前を呼べば、しっかりと声が返ってくる。わざわざ近くまで来て、心配そうにこちらを見て。やっぱりかっこいいな、私なんかじゃやっぱり届かないよ。
・・・でもね、私、このまま終わりたくないんだ。無様に振られてハイサヨナラでも、軽蔑されても、それでも構わない。今までの関係が崩れちゃっても、そしたらまたやり直すから。・・・だから、ね。体調が悪いこの時を利用して、君に言うんだ。この言葉を。

「あのねー」

ほら、早く言いなって。今言ったらもしかしたら何かあるかもしれないよ?片思いなんて続けば続くほど辛いんだから、今の内に壊しちゃいなよ。ほら、早く、

「・・・なんでもない」
「? どうしたんじゃ?」

・・・まただめだった。やっぱり私には「好き」だなんて言えない。大好きな君に、私のつたない思いを伝えることなんて・・・。

「・・・倉木?」
「なんでもないってば!」

そう言って笑って、私は仁王君から離れた。屋上のフェンスの方に歩み寄って、遠くを見つめる。仁王君が後ろで首をかしげているけれど、何も言えなかった。


きって持ちが言なくて


(きっと、私たちの関係はずっとこのまま)
――――――――――――
仁王夢でした!
中途半端ですみません。

2012/2/4 repiero (No,5)

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