||最初から、最後まで


隣にいるだけで幸せでした。いつかその手を取れたら、なんて淡い夢を描いては溜息をついていました。今は無理でも、きっといつかは叶うかもしれない。夢を見るだけなら、何の罪もないんだから。

・・・でも、もう。
その夢は、叶わないんですね。


「・・・好きな人?」

隣の席の"親友"が切り出した言葉に、無意識に眉を寄せた。親友・・・長太郎にしては、性質の悪い冗談だ、と。

「へー、誰なの?」

どうせ嘘だと思った私は、それに悪乗りするつもりでそんな事を尋ねた。すると彼は恥ずかしそうに、

「隣のクラスの桃山さん。知ってる?」
「・・・幼馴染。なんで、もも?」
「なんでだろう」

と笑った。再び顔を顰めた私に、長太郎が苦笑した。皺の寄った眉間に人差し指をあてて軽く押される。

「ぐえっ」

いつものように、わざとらしく変な声を出してやると、長太郎は嬉しそうに微笑んだ。彼の真意はわからないが、長太郎はよくこうして私をからかってくる。

「・・・で、今の話、冗談でしょ?」

眉間の辺りを両手で押さえながらそう尋ねると、長太郎は少し驚いたような顔をした。私が彼の冗談や嘘を見破ると、彼は決まってこんな顔をするんだ。だから今回も、いつもの「それ」だと思っていた。
まるで普段どおりの、くだらない、戯言だって。

「え?全部、本気だけど・・・・・・」
「・・・・・・え、」
「流石に俺もこんな事じゃ嘘つかないよ」

あはは、と楽しげに長太郎が笑った。

「桃山さんって、どんな人がタイプなんだろう」
「・・・・・・・・・長太郎なら、大丈夫だよ」

なんで私って、こんなにも馬鹿なのかな。





毎日、毎日、代わり映えのない話を聞かされていた。でも私にはそれが楽しくて、彼にとってもそれが楽しくて。代わり映えのない関係も、彼が私だけを見てくれているのならそれも良いと、そう思っていた。変わらないのなら、それでも良いと。
・・・結局それは、私の独りよがりだったわけだけれど。

「ねぇ、桃山さんって何色が好きかな」

変わった事は、無邪気に笑う君の表情が、たまらなく嫌いになった事だ。





「・・・告白した?」
「うん、オッケーだって!舞が相談に乗ってくれたお陰だよ」

ありがとう、と長太郎は笑った。私もそれに無理矢理笑って、適当に言い訳して彼に背を向けた。

「・・・っ、」

なんで背中なんて押しちゃったんだろう。なんで相談乗っちゃったんだろう。聞きたくも無い話を聞き続けて、勝手に傷付いて。それでもやめなかったのは・・・きっと、あなたの隣にいられなくなるのが怖かったからだ。


帰り際、楽しそうに笑う男女の姿を見た。どちらもよく見知った人物で、今日から付き合い始めたとは思えないほどお似合いのカップルに見えた。
私はそれを遠くから眺めながら、そっと踵を返した。


最初から、最後まで


あなたの幸せだけを、願って。

――――――――――――
明らかに長編向きなネタでした。
とある曲の歌詞を元に書いています。

2012/5/30 repiero (No,42)

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