||泣いているのかもね 雨が降っているから。


ざぁぁぁぁ、と、窓の外で大量の雫が流れていった。酷い雨だ。
あれから3日が経って、俺はどこかずっと重い心持ちでいる。どんよりと曇った空が、まるで自分の心を写しているかのように見えた。神が人間一人の都合で雨を降らすはずなんてないのに。
「神」という本は、昨日ようやく読み終えた。読むだけなら一日で十分だったが、その内容をじっくりとまとめるのには二日は必要だった。読み応えがあって考えもはっきりしていて、面白い本だった。彼女が勧めたのも、なんとなくわかるような気がした。
その本の内容を思い起こそうとして、俺はちらりと時計を見た。今は木曜の6限目。国語の授業だ。都合の良い事に今日は自習で、そしてその課題も俺は先ほど終えてしまったから、今はかなり暇だった。外で降る雨の行く末を眺めるのにも、退屈が余る。静かな教室が礼拝堂のようだった。

あの本の中では、神は複数いるという考え方をしていた。その中で力の差はあれど位はなく、たったひとつ、全ての神々の創造主として「最高神」だけが突飛しているのだそうだ。最高神はわれわれの世界の土台をつくり、他の神々をつくって、そうして最高神の寿命が終わるまでの「スケジュール」を創った。他の神々はそのスケジュールどおりに世界を動かし、事務作業のようにそれを淡々とこなしていく。その間、最高神の干渉は一切ない。ただ世界を「見る」だけで、それ以外は何もしないのだ。最高神は、そういう存在であると・・・著者は述べていた。
最高神に創られた神はそれこそ星の数ほどいる。雨の神、晴天の神、飢饉の神、豊穣の神・・・。それぞれが一つ一つを司り、そうして全ての世界を回す。たとえ人間がいくら豊穣を願っても、いくら雨を請うても、スケジュールにその予定がなければ、願いは一切聞く事がないのだそうだ。それでは祈りを捧げる者が哀れすぎやしないかとも思ったが、それだけ強大な存在が矮小な人間の頼みを聞き届けるというのも考えてみれば可笑しな話のような気がした。誰もが道端に転がる小石のひとつひとつに見向きもしないのと、同じ事なのだろう。

(・・・神、か)

信じてみるのも、信じないのも悪くはないと思う。あの本の述べている説を真実とするのなら、信じようが信じまいが、神にとっては関係がないのだから。

ざぁぁぁ、と、相変わらず雨の音はうるさい。授業はあと5分で終わる。きっと皆が皆、この雨がやめば良いと願いながら走って家に帰るのだろう。その願いが届くことは無いのに。

一点の慈悲もなく空を覆いつくす雨雲を、俺はまるで泣いているようだと思った。

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