||あなたが神に願ったこと





「あ・・・・・・」

そんな呆けた呟きに、PCをしていた君は目を見開いた。流れていく血に、光は慌てて私に駆け寄る。落とした包丁は綺麗に床の割れ目に突き刺さり、私の左手にはグロテスクな傷が残る。
ぼーっとしながら料理をしていたら、うっかり手を切ってしまった。肉は浅く切れただけなのだけれど、見た目が酷い。血の量もちょっと多めかな。

「夕菜、夕菜・・・!!」

光は完全にパニックに陥りながら、震える手で私の手当てをしてくれた。普段の光からは絶対に考えられない、無防備な弱弱しい姿。そんな君の顔、初めてだ。

「光、そんなに心配しなくても・・・」
「夕菜、病院行こ、頼むから」

途切れ途切れに君は告げた。大分落ち着きを取り戻してきているものの、まだ混乱は抜けないようだ。愛されてんなぁ、私。

「・・・光、深呼吸しようか」
「おまんが馬鹿過ぎてそんな暇あらへんわ」

・・・おっと、油断するとすぐに毒が飛び出るのだから。
しかしその直後、光がちゃんと深呼吸をしているのを見て思わず笑ってしまった。なんだかんだ言って、私の話はちゃんと聞いてくれるんだよね。
微笑む私の横で、光が私の傷を見て顔を歪めた。

・・・あ、今君が考えた事、当ててあげようか。

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