||空っぽの涙と消えた笑顔





感動の映画を見た。そりゃもう、超ド級のドキュメンタリー映画。私は適当な性格のわりに涙脆い方で、映画が始まって1時間経つ頃にはすでに涙腺崩壊状態だった。あーもう、あそこで死んじゃうとか反則でしょう。
ぼろぼろと流れていく涙はそのままに、私は画面に釘付け。反対に、隣に座る光は私に釘付け。涙脆いと言っても光の前で泣いた事は少ないし、そもそも泣くような性格だと思われてないから、珍しいのだろう。光はもうこの映画を一度見た事があるようで、時々画面の方に視線を移すものの、ほとんどは私の方をじっと見つめていた。

「終わった・・・」

映画は最後まで感動だった。よくあるありきたりな話なのに、なんでこんなに泣けちゃうんだろう。あーあ、なんか泣ききった気分。もう当分涙は出そうにないな。

「面白かったね」
「え?あ、あぁ・・・、おん」

曖昧な、上の空のような返答。眉を顰めて光の方を見れば、彼は物珍しげに私の方を見ていた。やはり彼にとって、私の涙は珍しいらしい。見るのは構わないが、無表情はやめて欲しいものだ。

「・・・アホ面やな」
「うるさい」
「世界アホ面選手権でイイ線いけるんとちゃうか」
「んなふざけた選手権があってたまるか。ってか、そこはちゃんと気を遣って1位とは言わないんだね」
「おまんのアホ面じゃ1位どころか最下位の危険性もあるからな」
「ねぇ、それなんていうデレ?」

そんな会話をしていたら、不意に光が無表情のまま押し黙った。ちょっと首を傾げて笑いかけてみたけれど、やはり光の表情に変化はなかった。

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