||誰かが君を殺すなら





クーラーのよく効いた部屋で、アイスを頬張っていた。下手をすれば寒いぐらいに涼しい室内は、外の真夏日和とはまるで正反対。

「バリバリ君って神だよね」
「そやな」

・・・うん、今日も美味しい。光も私とは色の違うアイスを口に含んで、小さく息を吐き出した。窓の外からは、蝉の鳴き声だけが聞こえてくる。たった一枚のガラスを隔てているだけなのに、まるで別世界。陽炎見えそう。
私は最後の一口を口に含むと、口内の冷たさに顔を顰めた。それからアイスの棒を、光の方へと突きつける。捨てて、とつまりそういうことだ。光はすぐにその答えまで考えがまわらずに、驚いたように棒の先を見た。残念ながら、棒の先に「あたり」の文字はない。

「・・・捨てろって言いたいんか?」

コクリ、と少し控えめにうなずく。それなら口で言え、と光に頭を叩かれた。暴力はんたーい。すると私の不貞腐れたようすに、君が薄く笑った。全く何がしたいんだか。はぁ、と溜息をついて窓の外に再び視線を向けた。あぁ、外は暑そうだなぁ。

「・・・あ」

不意に光が呟いて、私の肩を叩いた。振り返れば、光が少し嬉しそうにアイスの棒を差し出した。それを見て、私はあぁ、とうなずく。

「『あたり』だね」

まったく君は、いつだって私の何倍も恵まれているんだから。

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