||別れの時は察しろよ





真夏の公園。淡く木漏れ日の差す木の下で、私はぐてりと寝転がっていた。それなりの広さの公園に置かれた、唯一のベンチ。そこは私の体によって占領され、時折草木が風にざわめいては眩しさに目を細めた。
暑い、だるい、帰りたい。だらしなく体を伸ばしている私の頬を、光の指が押した。光はベンチの目の前にしゃがみこむような形で座っている。

「変な顔や」

そういわれても、元からこんな顔だよ。気だるげに答えた私に、彼は小さく笑った。どこかのんびりとした空気が、私の気分を落ち着かせた。こういう空気、良いよね。永遠に続きそうな感じがしてさ。

「暑いなぁ」
「そうか?昨日よりマシやろ」

光はそう言うけど、私にとっては暑いんだよ。相変わらず私の手に巻かれたままの包帯は、昨日と違って真っ白だ。包帯の下にあるのは仕事でミスをしてしまった時にできた怪我で、そこまで大した傷にはならなかった。光はその白をじっと見つめてから、私の方へ視線を向けた。そうして妙に真剣な顔を作って、私の自慢の彼氏が口を開く。

「俺、好きな人ができたんや」

さわさわさわ、と風に草木が流れた。先ほどと全く変わらない空間だ。彼の表情は真剣だけれど、私は相変わらず気の抜けたような顔で。いつもの会話と変わらぬテンポで、私はこう答えた。

「あー、ほんと?」
「・・・え?」
「良かったね。誰よ」

そう言うと、彼は大きく目を見開いた。

「ショックやないんか?」
「えー、だって嘘でしょ?」

すると光は再び目を見開き、それから呆れたように笑って、嘘に決まっとるやん。と言った。ほらやっぱり。

「っつか、普通こういう時は真剣になるやろ」
「なんでよ」
「なんでって、・・・アホか。察しろや」

察しろって言われても・・・。

「嘘」だと思えなきゃ、君となんてやってけませんから。

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