||こんなふうに死になさい


繋がれた手。冷ややかな温もり。ギラギラとうるさい太陽の火照り。それに負けじと陽炎を立ち上らせる灼熱のアスファルト。

「あー、あつーい」

私は悪態づいてうんざりと顔を歪め、隣の男は涼しげな表情でその手を握った。私の手に巻かれた白い包帯には赤黒い染みがじんわりと滲んでいる。もしもこの手を離したら、君の手は赤くなっていることだろう。私の赤い愛の印で。

「ひかる、手」
「手?手がどうしたんや」

隣に立つ私の彼氏、光はそれに気がついている筈なのに、この手を離そうとはしなかった。あぁ、嬉しい愛情だね。私と手を離したくないってか。
ちらりと横を見ると、光はただ前だけを見つめて歩いている。本当に、いつ見てもかっこいいな。あは、私の自慢の彼氏だよ。

「暑いね」
「おん」
「どこでもドアがあればすぐに家なのに」
「俺はタケコプターの方が欲しい」
「光にタケコプターとか・・・なんか笑える」
「どういう意味や。・・・あ」
「え?」

光が足を止め、私もそれにつられて止める。光の視線を追えば、道の隅っこに、黒猫の死体が転がっていた。たぶん車に轢かれて、親切な人が脇にどかしてくれたんだろう。この道は狭いからなぁ。可哀想に。
そういえば、黒猫は不幸の象徴だっけ?・・・良いね、素敵。これって良いコトの前兆かな。例えば、そうだな・・・

「明日私がこの世界から消える」

とか。そんなことを呟いたら光がこちらを見て顔を顰めた。いきなりなんや、厨二病か。なんて言われたから違うと言いつつも舌を出すと、やれやれとばかりに呆れられてしまった。

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