||きみといっしょにごはんを食べます





翌日の放課後のこと、親友にして後輩の財前君を誘ってご飯を食べに行った。自ら人を誘うなんてのは私にしては珍しい事で、財前君は驚きつつも了承してくれた。
もしかしたら、奢りという言葉につられたのかもしれないが。

「む、デミグラスソースがうまーい」
「こっちのタルタルソースも美味いっすわ」
「まじか、じゃあこうかーん」

とかなんとか言って話すのは、いつも通りのくだらない内容。財前君は普段クールな分、私といる時とのギャップが激しい。毒舌なのは私の前でも変わらずだけど、自惚れでなければ財前君は相当私に気を許していると思う。

(・・・お、この曲かっこいい)

財前君の作った曲を聞きながら、モグモグとご飯を食べ進める。たしかにタルタルソースも美味しいな。サラダのドレッシングも食べておきたかったかも。

「・・・・・・」
「美味いっすね」

イヤホンから流れてくる曲を聞きながら、じっと彼の笑顔もへったくれもない顔を眺めた。財前君は誰の前でも、滅多に笑わない。一度で良いから彼を思い切り笑わせてみたいものだ。
こうやって財前君と向かい合っていると思うのだが、私達というのは相当に可笑しな関係なのだろう。互いに親友だと認め合っているのに、財前君は未だに敬語だし、私も彼を名前で呼ぶことはない。あくまで「先輩と後輩」という関係の上での、「親友」だった。

(・・・財前君ってやっぱりかっこいいよねー)

別にだから何かあるわけではないが、でもそれは素直にそう思う。財前君はかっこいい。整った顔、でも、表情がないから、酷く寂しいものに見えた。

「・・・この善哉まずいっすわ」

楽しみにしていたデザートを食べ始めた君は、顔を顰めてそう言った。それを見て、ふと閃く。

「じゃあ、今度私が作ってやるよー」

冗談半分、我ながら面倒な事を言い出したものだ。それにこんな事を言ったって・・・

「まじっすか」

・・・って、君、そんな顔もできるんだ。

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