||鬼は誰?
*鬼隠しのルール(オリジナルの鬼ごっこです)
人数分のくじを用意します。一つだけ当たりを用意し、それに当たった人が鬼になります。全員が一斉にくじを確認し、その瞬間から鬼ごっこはスタートです。鬼になった人は自分が鬼だと隠しながら全員を捕まえます。くじの中身を他人に見せる事は禁止で、口頭でくじの中身を伝える事はありとします。制限時間内に全員が捕まったら鬼の勝ちです。
補足:捕まった人は指定の場所で待機。他の人に鬼が誰か教えることは禁止とする。「・・・と、いうルールで、鬼ごっこやってみぃひん?」
「へー、面白そうだね」
「付き合いきれないっすわ」
「全員強制参加な」
一人だけ嫌そうな財前君も無理矢理巻き込み、私達は鬼隠しをやる事に決めた。範囲はこの学校内のみ。白石君が早速くじを用意してくれて、全員で一斉にくじをひく。
「逃げろぉぉぉぉ!!」
早くも謙也君はくじの中身を確認するなり持ち前の足の速さで逃げていき、私も「外れ」の文字を見てすぐに逃げ出した。後方でも、皆が散り散りに逃げていったようだ。鬼が誰なのかはわからなかったけど、たぶん白石君かな?誰かの後を追うように逃げていったみたいだし。
「鬼ごっこなんて何年ぶりかな」
走りながら、私は少し弾んだ口調でそう笑う。早くも金ちゃんが捕まったようで、廊下の向こう側から叫び声が聞こえた。
ふふ、毒手って脅されちゃったのかな?
でも、すぐ近くに鬼がいるって事だ。早く逃げないと・・・
「あ、先輩」
「財前君?」
向かった方向から顔をのぞかせた財前君が、私の方を見る。そのまま軽く頭を下げてさっき金ちゃんの悲鳴が聞こえた方に走り出そうとして、慌ててそれを呼び止めた。
「そっちは鬼がいるみたいだから、行かない方が良いよ」
「そうっすか。ご忠告感謝しますわ」
財前君が向きを変え、私の方へまた戻ってくる。それを見て私も走り出すが、なぜか財前君がついてきた。
「・・・あの、一緒に逃げない方が・・・・・・」
「別に良いじゃないっすか」
「まさか鬼だったりしないよね?」
「先輩こそ鬼じゃないですよね?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
しばらく互いを見つめて押し黙っていたが、埒が明かなそうだったので諦めて前を向いた。まぁ、鬼は白石君っぽいから心配しなくても大丈夫だろう。
「・・・って、噂をすれば白石君!?・・・と、ユウジ&小春ちゃん」
「おぉ、財前と・・・結奈か。噂って何・・・「逃げろぉぉぉぉっ!!」・・・は?」
後ろで白石君が何か叫んでいたけど、無視。捕まりたくはないもんね!私は今まで走ってきた方向に向けて走り出した。誰かがいる感じはしないし、たぶん鬼は脇の道にそれていると思うから。
「うわ、鬼っておまんか!!」
後方からユウジの叫びが聞こえた。あぁ、捕まっちゃったんだね。どんまいユウジ・・・。私は白石君の魔の手からさっさと逃げる事にするよ。
そうして私が角を曲がった頃には、後ろの方で皆がギャーギャーと騒いでいた。全員捕まったらしい。って事は、残るは私を含めて5人?
「あと10分か・・・」
絶対逃げ切ってやろう。
◇
「あと5分」
あれから校内を歩き回っているが、特に鬼がくる気配もない。体力はまだまだ大丈夫だし、これは余裕かも?
そんな事を考えていたら、前方から謙也君が走ってきた。
「おーい、結奈ー!」
「あ、謙也君」
謙也君が私の前で止まり、嬉しそうな笑顔で荒く息をつく。どうやら無事に逃げてきたらしい。まぁ、スピードスターだしね。
「俺ら以外は全員捕まったみたいやで」
「え、まじで!?うわー、白石君強し」
「・・・ははっ、そやな」
謙也君の反応がワンテンポ遅かった気がするけど、たぶん疲れているんだろう。しばらく一緒に逃げよう、という謙也君の一言で、私達は行動を共にする事にした。
「皆そろそろ暇してるだろうね」
「まぁあいつらの事やしなぁ」
他愛のない会話に花を咲かせながら、のんびりと歩く。すると、謙也君が突然足を止めた。
「・・・ん?どしたの?」
「なぁ、俺、ずっと結奈に言いたかった事があんねん」
「え?なに?」
「そ、そそそその・・・・・・っ、」
さっきまで白かった謙也君の顔が、一気に赤く染まっていく。瞳はせわしなく宙を泳ぎ、わたわたと落ちつかなげに手を振り回す。
何の話だろう?まぁ、後3分ぐらいだし最後は謙也君の話を聞いて終わる事にしよう。
「おっ、おおおお俺・・・!!」
「??」
「おっ、俺、結奈の事が好きやねんっ!!」
「・・・・・・へ?」
言葉と同時に、謙也君に抱きつかれる。私は何をする間もなく目を白黒とさせるだけ。でも「好き」という言葉にだんだん理解がおいついてきて、徐々に顔を赤くしていく。
「そ、それって・・・」
「結奈は俺の事、どう思ってるん?」
う わ め づ か い
「そ、の・・・!わわ、私も、好き・・・です」
「・・・ほんま?」
「・・・・・・うん」
私が顔を真っ赤にしてうなずいた途端、謙也君がに、と口元を緩める。それから耳元で囁くように、
「タッチ」
と言ってきた。
「・・・え?」
タッチって・・・一体何の事だろう?首をかしげた私に、謙也君がちょっと困ったような顔をして笑った。
「せやから、タッチ。・・・悪いな、鬼は白石やのうて俺なんや」
「・・・・・・へ?」
「これでばっちり全員捕まえたで!騙して、ごめんな」
「え、え、ちょっと待って!じゃあ、今のは・・・・・・」
「さ、皆のとこ戻ろうや」
「ちょ、謙也く・・・」
「・・・勿論、嘘やないで」
「!」
「もっ、戻るで!!」
小さく謙也君が呟いた後、顔を真っ赤にして走って逃げて行く。3秒も経たない内にあっという間に謙也君の姿は見えなくなり、私はその場に顔を赤くして呆然と立ちすくむ事しかできなかった。
鬼は誰?
答えは、謙也君でした。
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鬼隠しは、管理人が設定に都合の良いように考えたものです。鬼が有利なルールですね。
2012/3/27 repiero (No,38)
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