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ぎぃぃ、という音に、薄く瞼を開いた。まどろみの中にいた脳が、一気に現実へと引き戻される。
扉の閉まる音がして、小さな足音が窓辺の方へと動いていった。その姿を確認してから、身体を起こす。すると連二がこちらに視線を向けた。

「・・・おはよ」
「起こしてしまったか」

蓮二が笑った。寝ぼけ眼をこすり、蓮二の方をじっと見つめる。彼はカーテンと窓を開け放ち、静かに外を見つめていた。その視線はどこか遠くを見据えている気がする。

「なにか、見えるの?」

自身もそちらに視線を向ければ、外には変わらず夜空が広がるのみ。蓮二の方へと目線を移すが、彼は相変わらず窓の外だけを見つめている。

「蓮二?」

首をかしげた私の声に、返事はない。

と、不意に蓮二が立ち上がった。ガタン、と椅子が倒れて、蓮二がそれを少し寂しげな瞳で見つめる。その様子に、なんともいえぬ違和感を覚えた。

無言で彼は椅子を起こし、カーテンと窓を閉めてからこちらを見た。もう光はほとんどなく、蓮二の輪郭を捉える事でやっとだ。

「おやすみ」

そう呟いた彼の表情は、一体如何ほどだったのだろう。後方から差す僅かな月明かりが、蓮二の顔に暗い影を落とす。
笑っているのか、怒っているのか、それとも何の表情もうつしていないのか。それは、真っ暗闇の中ではほんの少しですら推し量る事ができなかった。

そのまま部屋を出て行く蓮二に、"待って、"と言おうとした。しかし、どうしてか声が出ない。昨夜はあんなにも高く鳴けたというのに。

私がうろたえている内に、蓮二は部屋を出て行ってしまった。そちらに溜息をついて、窓辺に視線を移す。もうほとんど外は見えないが、薄いカーテン越しに黄金色に光る月が見えた。

「・・・おやすみ」

小さく呟いて、悲しげに息を漏らした。


カーテン越しの


あぁ、今夜は満月だ。

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