||03





「愛してる」

その言葉を合図にしたかのように、噛み付くように口付けられた。
閉じられた私の唇を、彼の舌がそっと開く。口内に侵入したそれは、歯列を割るようにねとりと動き、歯茎の裏側をなぞって這い回る。互いに舌が絡み合い、重ねられた唇の隙間から卑猥な水音が鳴った。

「ん・・・」

唾液が糸を引き、唇がゆっくりと離れていった。蓮二は曖昧な私の瞳に小さく笑って、私の身を覆う薄い布を剥いだ。途端に冷たい外気が肌を刺し、ふるりと身体が震える。蓮二はそんな些細な動作にすら情を煽られるようで、見上げた彼の瞳は、暗闇でらんらんと輝いて見えた。彼の手が私の胸元をするりと辿り、触れられ撫でられた感覚にぞくりと身が粟立った。わりに冴えていたはずの思考は、だんだんと麻痺して快楽の先を期待している。

「っん・・・!」

蓮二が私の胸元に頭を埋め、胸の突起に軽く歯を立てる。唇と吐息での断続的な淡い刺激に、続きを求める身体が勝手に揺れた。伸びた手は蓮二の後頭部に回り、抱きかかえるように彼を引き寄せる。蓮二は胸に唇を寄せたまま笑って、あけていた片手でもう一方の突起を掻いた。すでに固く立ちあがったそれはそれに指の力を強め、すでに立ち上がったそれを指でぐりぐりといじった。背筋が泡立つような感覚に、身をよじる。

「あ、はっ、」
「・・・気持ち良さそうだな」

蓮二の言葉に、どうしようもない羞恥を覚えた。けれど、それで良いとも思う。私は荒く息をしながら彼を見て、薄く笑んだ。誘うように彼の頬を両手で挟み、くいと引く。すると彼の顔が近づき、深く口づけられた。互いに求め合うように肢体を絡め、僅かに汗ばんだ体を密着させていく。

「奈菜・・・・・」

蓮二の声に、目を閉じたまま緩く笑う。彼が私を求めているのがわかって、それが嬉しくてつい笑ってしまったのだ。その証拠に、彼の手は先ほどから下腹部の辺りをなぞり、性器に近づいては離れてをじりじりと繰り返している。
私の笑みを了承と取ったのか、彼の細い指が下着の隙間へと滑り込んできた。すでにぐちょりと濡れたそこを彼の指が撫ぜ、ゆるゆると奥に入れられていく。それだけで極めてしまいそうな快楽が身を襲って、たまらず身を捩った。すると彼の指が前後に動き始め、己の荒い息遣いと、ぐちょぐちょという淫猥な音が室内に響いた。

「んっ、あ・・・、はっ」
「良いのか?」

わざわざ聞かずともわかるだろうに、蓮二は試すようにそう問うてきた。うなずくと、嬉しそうな笑みが返ってくる。れんじ、と小さく名前を呼ぶと、彼もまたうなずいて、私に優しく口づけた。

「あっ・・・・・・あぁ、」

ずっと一本で動き続けていた指が増やされ、中でばらばらに動き回るのがわかった。少し動いただけで得られる快感に身悶えして、ぐしゃりと、白いシーツを握りしめた。いつも思うことだけれど、蓮二は前戯が長い。お前が痛くないようにするためだとは言うけれど、たぶん理由はそれだけじゃない。私が悶える姿を見るのが好きなのだ。今だって彼は、私の顔を見て何かそわそわとしている。彼がそのこみ上げる何かを抑えられなくなったとき、それが前戯の終わりの合図だった。

「ふっ、ああぁ・・・」

あれだけ忙しなく動いていた指が、ぐちょりと音を立ててあっさりと引き抜かれる。大きな喪失感につられて蓮二の方を見ると、彼はカチャリとベルトを外して、自身を晒したばかりだった。立ち上がったそれに私の蜜を滑らせ、秘所へとあてがう。一応とばかりに「いいか」という確認の声があって、私がそれにうなずくや否や、指とは比べ物にならないほどの質量が押し入ってきた。

「ぁっ・・・、ああああっ、あっ・・・!」

意思とは関係無しに甲高い声が漏れていく。だらしなくあけられた唇は唾液を止めることすらままならなくて、それを優しく蓮二の指が攫って行った。自分だって余裕がないはずなのに、蓮二はいつだって優しい。
どんどんと中に入ってくる彼の質量に耐え切れず、一瞬視界を真っ白にして私は頂点に達してしまった。途端に内壁が彼のものを締め付け、蓮二が顔をしかめる。奈菜、となだめるような声が聞こえてきてはいたが、彼の言葉を聞く余裕などある筈もなかった。
私の余裕がないのを察してか、蓮二は私の腰を掴んで引き寄せるようにした。一度収まっていた快楽の波が再び襲い掛かり、たまらず高い声が漏れる。それに堪え切れなくなったように、彼は大きく腰を引いて律動を開始した。

「ああっあっぁっあっ、」

貪るように、彼のものが内壁を何度も何度も抉っていく。寄せては返してを繰り返す快感の波に合せるように、嬌声が鼓膜を震わせた。意識がぐらぐらと揺れて、何度も視界が白くなった。けれど彼は止まる気配なく、律動を続けている。

「れん、じ、れんじ、」

気が付けば、名前を呼んでいた。追い求めるように繰り返す声は、彼の耳にはどう聞こえていたのだろうか。

「ああっ、」

最後の瞬間、ぐいと彼のものが引き抜かれ、私の腹の上に彼の精液が大量にまき散らされた。私はそれに笑って、たぶんぐっしょりと濡れているであろう股座を思って足をくねらせた。蓮二がティッシュやらタオルやらを使って丁寧にそれらをふき取ってくれたおかげで、すべて終わった後は気持ち悪い気など何もしなかったが。

「蓮二・・・・・・」

呟くように吐き出した熱を、夜風が冷ましていく。そういえば行為の前に蓮二が窓を開けていたな、と頭の隅の方で思い出した。声が聞こえるような範囲には家がないから良いものの、人が通りでもしたら声は丸聞こえだろう。あまりに今更過ぎることに気が付いて、思わず苦笑した。肌を撫ぜていく夜風は冷たくて、熱を持ちすぎた私の身体は、その冷たさにどんどんと落ち着きを取り戻していった。ぶるり、と身体が震える。

「奈菜・・・、」

蓮二が私の頬に手を滑らせ、下へ下へと伝わせていく。ずず、となめるように彼の手が腹の辺りをなぞり、その手の冷たさにまた身体を震わせた。


触れた手の温度のなんて冷たさ


私におやすみと囁く蓮二の身体は、私と同様、先程の熱が嘘だったかのように酷く冷え切っていた。
――――――――――――
初めて裏書いた・・・
臨場感が欠片もない。難しいです。

2014/7/2 大幅修正

[4/32]
[prev/next]

[一覧に戻る]
[しおりを挟む]

[comment]

[back]


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -